微生物を用いて油脂生産を行う際に、脂肪酸の質・量をコントロールすることはコストを下げる面で重要である。本研究では培地内の溶存酸素量の目安である酸素移動容量係数を変化させた状態で培養し、脂肪酸の生産条件を検討することとした。具体的には脂肪酸を多く生産する原生生物Aurantiochytrium sp. NBRC102614株を用いた培養実験を行った。 1年目は三角フラスコ培養実験および5リットル発酵槽での実験を中心に実施し、最適培養温度を見出し、回転数を一定に酸素移動容量係数を変化させた培養実験を実施したが、2年目は5リットル発酵槽での培養実験および1.2リットル発酵槽の酸素移動容量係数を求める実験を行った。5リットル発酵槽では、通気量を一定に酸素移動容量係数を変化させ、培養実験を実施した。酸素移動容量係数を大きくさせても細胞が破壊されている様子は見られなかった。脂質含有率はKLaが増加してもほとんど変化はなかったが、乾燥重量がKLaが大きくなると増加する傾向が見られたため、得られる脂質量はKLaが増加した方が多い結果となった。1.2リットル発酵槽では培地を入れた発酵槽で通気量、回転数を変化させ酸素移動容量係数を求める式を実験によって求めた。酸素移動容量係数が高い条件で培養した際に細胞が破壊されている様子が観察されたことから、細胞周囲の環境が酸素移動容量係数が高い時に細胞への何らかの影響が生じていることが示唆された。
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