研究課題/領域番号 |
18K05803
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
五十嵐 弘道 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 付加価値情報創生部門(情報エンジニアリングプログラム), 技術主任 (10578157)
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研究分担者 |
阿部 泰人 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (40627246)
齊藤 誠一 北海道大学, 北極域研究センター, 学術研究員 (70250503)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カツオ / サンマ / アカイカ / ハビタットモデル / 魚種間関係 / 漁場推定 |
研究実績の概要 |
本研究は、黒潮親潮移行域におけるカツオ・アカイカ・サンマ3魚種を扱う統合ハビタットモデルを構築して、3魚種のハビタットの相互位置関係等との関係から漁場形成条件を抽出することで、漁場形成要因として魚種間の捕食・被食関係がどの程度寄与しているかを定量的に評価し漁場予測に反映させることを目的としているが、R1年度はハビタットモデル構築に必要な各魚種についての漁場位置・漁獲データを収集するとともに、3魚種統合モデルと各魚種単体モデルをそれぞれ作成し、両者の結果を比較することにより各魚種の漁場形成に関わる環境変数と魚種間の捕食・被食関係の影響について検討した。 まず、2013-2015年の夏季を対象として、3魚種それぞれについて海洋環境のみを用いたハビタットモデルを作成するとともに、漁場推定対象魚種以外の2魚種の推定漁場分布を新たな説明変数として導入した3魚種統合モデルを作成し、これらのモデル結果を比較することにより魚種間関係について考察した。個別のハビタットモデルでは3魚種とも漁場推定に対する海面水温の貢献が約40%と高い値を示した。統合モデルとの比較では、サンマは2つのモデル結果にほとんど差が見られなかったのに対して、カツオは海面水温などの貢献度のうち全体の20%程度がサンマ・アカイカ分布にとって代わり、アカイカでも海面水温の貢献度の6.6%がカツオ分布にとって代わった。特にカツオとサンマの関係について、サンマの推定分布を活用することでカツオの漁場推定が高精度化する可能性が示された。 並行してサンマ漁場データの拡充を行うため、NPP衛星VIIRSセンサー画像からサンマの漁船位置を抽出する手法について、昨年度作成した手法に改良を加えて、確度の高い漁場推定情報を得ることができるようになった。これにより、ハビタットモデルの推定精度をさらに高めることができると考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、3魚種について海洋環境データと対象魚以外の2魚種の漁場推定分布データを用いたハビタットモデルを構築し、各モデルから得られる結果の相互比較により魚種間関係を示すことができた。特に、サンマとカツオの漁場位置が近接しているがハビタットに対してはサンマからカツオへ一方向のみの影響であるという知見を得ることができた。サンマとカツオの分布関係については、漁場形成条件として抽出される海洋現象との関係や、入力データとして使用する魚種別の漁場位置データのモデル推定精度への依存性などについて、さらに解析を進める必要があるが、統合ハビタットモデル構築をほぼ完成させたことで、次年度予定している統合モデルによる分布予測実験の下準備がほぼできたと考えられる。この結果を得たことにより、サンマの漁場位置データを拡充することが重要となるが、VIIRSのNPP画像データから漁船位置を抽出したデータアーカイブから、海洋環境との統合解析によりサンマ漁船だけを抽出するスキームを改良して、実際のサンマ漁船の位置データと比較することで確度の高い漁場位置情報を抽出することができるようになったことで、この手法を適用してデータ拡充を図ることができた。今後、AISによる船舶位置情報データを解析することでカツオの漁場位置データを拡充するための手法開発に取り組み、各魚種のデータ量をさらに増やしていくことで、統合分布推定モデルの精度向上につなげていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度中に、統合分布推定モデルの構築をほぼ終えるとともにモデルの精度向上のために必要な漁場位置データを拡充する手法を確立することができた。今後は研究計画通り、構築した3魚種統合ハビタットモデルに対して、さらに入力としての各魚種の漁場位置データを増やすことで高精度化を図った上で、これを用いて魚種別に漁場推定精度を検証する。さらに、この3魚種統合ハビタットモデルを用いた漁場予測実験を行い実利用での有効性を評価する、という手順により研究を進めていく。 当初計画では、漁場予測実験に用いる海洋環境データとしてFORA再解析データを使用することを予定していたが、気象庁の現業予報システムがR2年4月より更新され、FORA再解析を作成したベースモデルとなった10km格子の予報モデルから、新しく2km格子の高解像度モデルによる予測結果が現業配信されるようになった。実利用での有効性を評価する上では、今後現業で配信されていく予測データによる検証が必須であると考えられるので、これに対応する空間解像度を持った海洋環境データを用いて解析を行うことを検討する。さらに、ハビタットモデルに対する海面水温の貢献度の高さを鑑みて、より空間解像度の高いひまわり人工衛星観測データ等を用いて解析を進めることも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、NPP衛星VIIRSセンサー画像からサンマの漁船位置を抽出する手法を開発してサンマ漁場を抽出する作業で予定していた人件費・謝金について他経費から支出することができた。これにより研究計画の変更が生じることはなく予定通り研究を遂行しているが、新たにAIS船舶位置データからカツオ漁場位置を推定することでデータの拡充を図ることができることが分かったため、次年度使用額については、AISデータの購入費用及び解析のための謝金に使用する予定である。
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