研究課題/領域番号 |
18K05806
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研究機関 | 国立研究開発法人水産研究・教育機構 |
研究代表者 |
持田 和彦 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, センター長 (00371964)
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研究分担者 |
羽野 健志 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, 主任研究員 (30621057)
吉田 吾郎 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 瀬戸内海区水産研究所, グループ長 (40371968)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アマモ / 光合成 / 最大量子収率 / 生長阻害 / 除草剤 / 複合曝露試験 / 代謝物総体解析 |
研究実績の概要 |
環境因子がアマモの発芽に及ぼす影響を評価するためのバイオマーカー(代謝物)を探索するため、最初のステップとしてアマモの発芽時に差次的に発現する代謝物の同定を試みた。広島湾内で採取したアマモ花株をメッシュ袋に入れ、研究所内の流海水中に放置し、その後、枯れた葉片を除去して種子を採取した(イニシャル)。種子は濾過海水中にいれ、0 ℃で約2ヶ月保存した後に(低温処理サンプル)、腐葉土および海砂を添加したバットに播種した。およそ一月後に幼胚軸の発芽が認められた(発芽サンプル)。それぞれのサンプルは、外皮を除去した後に液体窒素で凍結し、-80℃で保存した。以上のサンプルの代謝物分析についてヒューマン・メタボローム・テクノロジー社に外注した。キャピラリー電気泳動-飛行時間分解型質量分析計 (CE-TOFMS) による分析の結果、219 の代謝物ピークが検出された。主成分分析の結果、それぞれのサンプルは明瞭なクラスターとして分離され、特徴的な代謝物を持つことが示唆された。イニシャルサンプルおよび低温処理サンプルの間では、2-aminobutyric acid、3-phosphoglyceric acid、ADP-Glucose および GDP-Fucose、並びに Ascorbic acid 等の顕著な減少が認められた。また、発芽サンプルを他の 2 サンプルと比較するとTCA 回路における Citric acid は顕著に減少していたが、その下流にある Succinic acid, Fumaric acid および Malic acid は顕著に増加しており、TCA 回路が活性化していることが示唆された。さらに、Histidine, Lysine, Tryptophan および Alanine などのアミノ酸も増加しており、その他の代謝経路も活性化されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はアマモ種子の発芽をエンドポイントとする毒性試験を実施するため、発芽時に差次的発現する代謝物を検索するため代謝物総体解析を外注分析した結果の解析を行った。解析の結果、発芽ステージに特異的と考えられる代謝物の発現の特徴を捉えることができた。また昨年度、除草剤濃度、光条件、および、水温を様々に変化させた、環境因子および除草剤の複合曝露試験を実施し、18-20 ℃ 以下の水温で、なおかつ光が不十分であると除草剤の影響が出やすいという結果を得たが、今年度も同様の複合曝露試験を実施し、昨年度の結果について再現性があることが確認できた。以上を鑑み概ね計画通りに進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画は、昨年度実施したアマモ発芽種子の代謝物総体解析の結果について、引き続き解析を進め、発芽時に生じる代謝物の変化についてその生物学的な意義の解明を試みるとともに、化学物質が発芽に及ぼす影響を調べるためのバイオマーカーの探索を行う。除草剤濃度、光条件、および、水温を様々に変化させた、環境因子および除草剤の複合曝露試験を引き続き実施し、これまでに得られた結果の再現性について検証するとともに、その機構についても解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、発芽にともなう代謝物の解析を行うことが主たる計画であったが、複合曝露試験についても実施する予定であった。しかし、個々の試験に十分な時間を確保できず、予定していた曝露試験をすべてこなすことができなかったため、試薬代が計画通りに使用できなかった。また、曝露試験に使用するアマモの採集を用船して実施する予定であったが、昨年度採取した場所で今年度も採取することが可能であったため、そこからサンプルを採集した。従って、これらの必要経費が繰り越しとなってしまった。
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