研究課題
サケ科魚類の河川流程分布に関する基礎データを得るため、本年度は北海道北斗市を流れる戸切地川および山梨県甲府市を流れる富士川寒沢川において継続してフィールド調査を実施した。各河川において、リーチ毎にサケ科魚類の魚種別の出現頻度または個体数密度を電気ショッカー又は潜水目視法を用いて調べた。戸切地川は2000年代までは、上流域にイワナ、中流域にニジマス、下流域にブラウントラウトと3種の優占種が流程に沿って変わる様子が確認されていたが、その後、徐々にニジマスが上流域において優占するようになり、2021年時点においてはニジマスが全流程において優占するような大きな変化をみせた。在来種であるイワナの減少には外来種との種間競争が関与していることが示唆された一方で、外来種であるニジマスの加入量については、稚魚期の降水量の年変動が関与していることも明らかとなった。富士川寒沢川においては、上流域でのみ優占していたイワナが当初下流域で優占していたアマゴ域でも分布を広げるように変化したことが明らかとなった。これは、下流域で優占するアマゴが砂防堰堤によって上流への分散が阻害されていることが一因と考えられた。これらの魚種で流程分布の年変化が生じた期間、戸切地川および富士川寒沢川の双方において、水温や河川の物理環境に有意な経年変化は認められなかったことから、種間競争がサケ科魚類の流程分布に影響を及ぼしていることが示唆された。このように本年度は、サケ科魚類の河川流程分布の経年変化について興味深い知見を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
予定していたフィールド調査が順調に遂行でき、得られた結果についても分析および論文化が進んだ。
フィールド調査を継続して実施するとともに、データ解析と論文化を進める。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Ecological Research
巻: 37 ページ: 188-196
10.1111/1440-1703.12288
Ichthyological Research
巻: 69 ページ: 194-196
10.1007/s10228-021-00823-4