研究課題/領域番号 |
18K05810
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岸村 栄毅 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (50204855)
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研究分担者 |
尾島 孝男 北海道大学, 水産科学研究院, 教授 (30160865)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 未利用資源 / 紅藻 / ダルス / キシラン / キシロオリゴ糖 / ビフィズス菌増殖促進 / パエニバチルス / キシラナーゼ |
研究実績の概要 |
近年申請者らは、北海道のコンブ養殖現場で多量に除去される未利用の紅藻ダルス(Palmaria sp.)が高純度のキシランを含有することを明らかにしました。また、北海道の海岸で採取した海藻堆積物からダルスを唯一の炭素源とした培地で増殖するPaenibacillus sp. PSY-1株を単離し、本菌の培養上清中にダルス・キシランをオリゴ糖に加水分解するエンド型キシラナーゼの活性があることを見出しました。そこで本研究では、PSY-1株由来のキシラナーゼを用いて、北海道産ダルスのキシランからキシロオリゴ糖を調製し、その構造特性を明らかにしたいと考えました。また、調製したキシロオリゴ糖が腸内菌叢改善作用を持つかどうかを調べたいと考えました。 本年度は、第一に、北海道産ダルスからユニークな構造を持つβ-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオース(PX3)を調製し、その腸内細菌増殖作用をβ-(1→4)-キシロトリオース(X3)のそれと比較しました。その結果、PX3はBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対して、X3より高い選択増殖作用を示すことが明らかになりました。 第二に、PSY-1株の培養液から粗キシラナーゼを調製しました。 第三に、ダルス・キシランを多量に抽出できる簡易な方法を検討しました。何故なら従来の方法では、有機溶媒を用いてダルスから脂溶性成分を除去した後、8 M尿素溶液を用いてキシランを抽出していました。しかしながら、このような方法で抽出したダルス・キシランからキシロオリゴ糖を調製した場合、多量の試薬を必要とし、また、使用した試薬が腸内細菌や動物に悪影響を及ぼすと考えたからです。その結果、北海道産ダルスの乾燥粉末を熱水抽出することで、比較的純度の高いキシランを簡単に調製することができました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
北海道のコンブ養殖現場で多量に除去される未利用の紅藻ダルス(Palmaria sp.)が高純度のキシランを含有し、このキシランから調製したユニークな構造を持つβ-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオースがBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対して、β-(1→4)-キシロトリオースより高い選択増殖作用を示すことを明らかにしました。また、PSY-1株の培養液から粗キシラナーゼを調製することができました。さらに、ダルスの乾燥粉末を熱水抽出することで、比較的純度の高いキシランを簡単に多量に調製する方法を見出しました。以上のように、本研究は概ね順調に進行しています。しかしながら、PSY-1株から調製した粗キシラナーゼの活性が低く、今後はPSY-1株とは異なる菌株からのキシロオリゴ糖の調製が必要となる可能性もあります。
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今後の研究の推進方策 |
北海道産ダルスから調製したユニークな構造を持つβ-(1→3)/β-(1→4)-キシロトリオースがBifidobacterium adolescentis(ビフィズス菌の一種)に対して、β-(1→4)-キシロトリオースより高い選択増殖作用を示すことをin vitro試験において明らかにすることができました。そして、北海道産ダルス由来キシロオリゴ糖の腸内菌叢改善作用をin vivoで試験するために、キシランを安全で簡易に多量調製するための方法を見出しました。 今後は、北海道産ダルス由来キシランからキシロオリゴ糖を調製するために、PSY-1株あるいは他の菌株からキシラナーゼの調製を試みます。そして、北海道産ダルス由来キシランから調製したキシロオリゴ糖混合物がビフィズス菌に対して高い選択増殖作用を示すことをin vitro試験において検討します。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費節減がなされたので、次年度の物品費として使用する。
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