研究課題
環境ストレスは水棲生物の生存、成長、繁殖などに影響を与える。オキシテトラサイクリン (OTC) は代表的抗生物質であるが、それより誘導される化学的ストレスが魚類に及ぼす影響は不明である。本研究ではギンザケの生化学的バイオマーカーに及ぼすOTCの影響について検討した。 1. OTC(富士フィルム和光純薬)を市販飼料に浸透させて、10 mg / 100 g 体重 / 日となるように4日間と8日間経口投与した。2.ヒートショックプロテイン(HSP) 70の発現量は、ウエスタンブロッティング-ケミルミネッセンス法で測定した。3.グルタチオンレベルはグルタチオンリダクターゼ・リサイクリング法により測定した。4.グルコースレベルはムタロダーゼ・グルコースオキシダーゼ法で測定した。 1.HSP70の発現:OTCの投与により肝臓におけるHSP70の発現量は増加し、8日後には有意に増大した。一方筋肉では4日後に一度減少し、その後対照区レベルに戻った。この肝臓におけるHSP70発現量の増加はヒートショック後の挙動と似ており、すなわち、OTCとヒートショックによるいずれのストレスでも肝臓におけるHSP70の発現が影響を受けることが分かった。2.グルタチオンレベル:細胞内の代表的抗酸化物質であるグルタチオンは、OTC投与により血漿と肝臓において増加する傾向にあった。3.グルコースレベル:OTC投与により血漿のグルコースレベルは増加した。以上のようにOTCの短期間の投与は生化学的バイオマーカーのレベルを変化させたことから個体にストレスを誘発し、特に組織のレドックス状態に影響を与えると推察される。今後は他の特徴的なバイオマーカーの動態と合わせ評価し、化学的および物理的なストレスが生体に及ぼす影響を解析することが望まれる。それらを基に生体内で誘導されるストレスの防止や低減法について検討すべきであろう。
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Evolution of Marine Coastal Ecosystems under the Pressure of Global Changes
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