研究課題/領域番号 |
18K05818
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
根本 理子 岡山大学, 環境生命科学研究科, 特任助教 (30625926)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 珪藻 / バイオミネラリゼーション / RNA-seq解析 |
研究実績の概要 |
令和元年度は、前年度に取得したNitzschia属珪藻の発現遺伝子データを用いて、珪藻種間の網羅的な比較解析を実施し、珪藻のみに保存された被殻形成関連候補タンパク質を同定した。Nitzschia属珪藻に加え、Achnanthes属珪藻、Pseudoleyanella属珪藻の発現遺伝子データを構築し、ゲノム解読された5種の珪藻とともに網羅的な比較を行った。その結果、珪藻のみに保存された6,841個から15,654個の遺伝子を抽出した。さらに、全生物の遺伝子データと比較することで、その中でも珪藻のみに保存された590個から1,830個の遺伝子を抽出した。さらに、タンパク質の局在予測プログラムを用いた解析から、珪藻のみに保存され、かつ小胞体輸送シグナル配列を持つタンパク質をコードする73個の遺伝子を抽出した。その中には、メチル化活性を持つSETドメインをコードする遺伝子が7個含まれていた。珪藻のみに保存された新規のメチルトランスフェラーゼファミリーとして、Bacillariophyceae-specific SET domain (BacSET) タンパク質と命名し、さらに解析を行った。遺伝子発現解析を行ったところ、被殻形成にともないBacSET タンパク質をコードする遺伝子の発現が誘導された。BacSET タンパク質は、既に報告されている被殻形成関連タンパク質、もしくは珪藻特異的な長鎖ポリアミンのメチル化に関与していることが示唆された。 さらに、Nitzschia属珪藻について、申請者が構築した遺伝子組換え用ベクター及びエレクトロポレーション法を用いて形質転換を行ったところ、薬剤耐性を示すクローンの取得に成功した。また、PCR法により取得したクローンのゲノム中に導入した遺伝子が組み込まれていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に取得したNitzschia属珪藻の発現遺伝子データを用いて、新たに珪藻種間の網羅的な比較解析を行い、珪藻のみに保存された被殻形成関連候補タンパク質の同定に成功した。上記結果は、令和元年度にイギリスで開催された国際分子珪藻学会で発表した。さらに、論文にまとめて投稿し、受理された。また、エレクトロポレーション法を用いてNitzschia属珪藻の形質転換を行い、薬剤耐性を示すクローンを獲得した。さらに、PCR法により取得したクローンのゲノム中に導入した遺伝子が組み込まれていることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度に取得したNitzschia属珪藻の形質転換体について、サザンハイブリダイゼーションにより遺伝子導入の確認を行う。また、上記形質転換に用いたベクター中には、GFPがコードされているにもかかわらず、形質転換体にはGFP由来の蛍光が確認できなかったため、GFP以外の蛍光タンパク質遺伝子の導入を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会参加費用を抑えることができたことと、消耗品費用が安価なエレクトロポレーションを用いて、Nitzschia属珪藻の形質転換体を得ることができたため、研究費を次年度に持ち越して使用することとした。GFP以外の蛍光タンパク質遺伝子導入のための形質転換用ベクターを作製する費用に使用する。
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