研究課題
漁業被害をもたらす赤潮原因プランクトンの内、特に魚介類に強い致死作用を示す種としてシャットネラ、ヘテロカプサ及びカレニアが知られており、これらの種による赤潮は毎年、数億円から数十億円の漁業被害を引き起こしている。本研究ではこれらの赤潮原因プランクトンの毒性因子の生化学的解析を主目的として実施した。これまでの研究でシャットネラは高レベルの活性酸素を産生することを明らかにした。シャットネラの魚毒性の強さと活性酸素産生能とはよく一致することから、活性酸素がシャットネラの毒性因子の1つであると考えられる。さらに、最近の研究から、シャットネラのみならず、多くの赤潮原因プランクトンは活性酸素産生能を有し、海洋生物に毒性を示す種は他の比較的無害な種に比べ、その産生能力が高い知見も報告されている。最近、北海道で赤潮の原因種として報告されたカレニアも活性酸素産生能を有することを見出している。活性酸素に加え、シャットネラ、ヘテロカプサ及びカレニア細胞内には光依存性溶血因子が存在する事を見出した。これらの赤潮プランクトンに存在する溶血因子の詳細研究生から、本溶血因子はポルフィリン誘導体であることが示唆された。さらに上記赤潮プランクトン細胞が破壊されると細胞外に溶血因子が遊離し、自身の細胞や他の種の赤潮プランクトンに対して死滅作用を示すことも見出された。従って、溶血因子の遊離を伴う細胞破壊は赤潮防除対策に利用できることが示唆られた。高純度ポルフィリン誘導体の生化学的研究から、本溶血因子は抗菌作用や抗がん作用を示すことが見出された。これらの作用は光照射された本物質が産生する一重項酸素に起因すると推定された。本研究の主な成果は(1)赤潮プランクトンの毒性因子として活性酸素と光依存性溶血因子を見出した点、(2)溶血因子は多彩な生物活性を示す応用利用可能な生理活性物質であることを明らかにした点である。
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