研究課題/領域番号 |
18K05825
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
吉田 照豊 宮崎大学, 農学部, 教授 (20240294)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ABC輸送体 / lsa / Lactococcus garvieae / ブリ / リンコマシン耐性 |
研究実績の概要 |
魚類レンサ球菌症の原因細菌Lactococcus garvieae血清型IおよびII型のリンコマイシン耐性の疫学調査をした。その結果, I型血清型は、臨床株のほとんどがリンコマイシン単剤耐性株であった。II型血清型は2012年に初めて養殖場で確認されて以来、2015年にリンコマイシン単剤耐性株が見つかり以後増加していた。リンコマイシン耐性株と感受性株の代表株のゲノム解析を行った。その結果、血清型IおよびII型共に、ABC輸送体タンパクをコードするlsa遺伝子において、ヌクレオチドの点変異が耐性株と感受性株に確認された。血清型IおよびII型リンコマイシン単剤耐性株のlsa遺伝子を、相同組替えによりノックアウトしたlsa遺伝子欠損株をそれぞ作製した。lsa遺伝子欠損株のリンコマシンに対する最小発育阻止濃度(MIC)を測定したところリンコマイシン感受性に変化していたために、lsa遺伝子がリンコマイシン単剤耐性に関与している遺伝子である可能性を示した。また、ゲノムを解析した株以外のリンコマイシン単剤耐性株のlsa遺伝子の塩基配列を決定したところ、同様に同じ箇所に点変異が確認された。また、リンコマイシン感受性株を低濃度のリンコマイシンが含有培地で継代培養することで、人工耐性株を作製した。このリンコマイシン人工耐性株も同様に、同箇所の点変異が生じていた。また、I型のリンコマイシン耐性株のlsa遺伝子ノックアウト株に、耐性株のlsa遺伝子をクローニングした発現ベクターを導入した相補株は、リンコマイシン耐性が回復していた。この結果より、I型株のリンコマイシン耐性は、lsa遺伝子が関与していることを証明した。現在は、II株の相補株を作製している段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初目的としていた、血清型I及びII型のL. garvieaeのリンコマシン単剤耐性株のABC輸送体遺伝子をコードするlsa遺伝子を、ノックアウトすることができた。そのため、lsa遺伝子欠損株のリンコマシンに対する薬剤感受性を調査することで、lsa遺伝子がリンコマイシン耐性に関与することの間接的証明が得られた。今後は、lsa遺伝子欠損株に再度lsa遺伝子を戻し、相補株を作成することでlsa遺伝子のリンコマシン耐性の関与を直接に証明する予定である。血清型I型に関してはすでに終了しているために概ね、本研究は順調であると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進め方として、1)lsa遺伝子欠損株にlsa遺伝子を戻すことで相補株を作製する。相補株に対するリンコマシンに対する薬剤感受性試験を実施し、耐性が回復し、リンコマイシン耐性となっていることを証明する。2)I型lsa遺伝を、II型のlsa遺伝子欠損株に組み込み、I型の遺伝子がII型において発現するかを確認する。また、その逆も同じように確認する。3)リンコマイシン感受性株を、人工的に継代培養することでリンコマイシン耐性株を取得する。その人工耐性株のlsa遺伝子の変異を塩基配列を決定し、同様に同じ箇所に点変異が生じているか証明する。4)カンパチなどの養殖魚を実験魚として、リンコマイシン投与した場合、どれほどで耐性菌が出現するかを明らかにする。5)ABC輸送体タンパク質の阻害剤であるレセルピンなどの物質とリンコマイシンを同時に加え、L. garvieaeリンコマイシン耐性株の耐性レベルの変化を明らかにすることで、リンコマイシン耐性がABC輸送体であることを証明する。
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