研究課題
ニベ×シログチ雑種は、生殖細胞欠損型の不妊性を示すため、海産魚の代理親魚技法における有用な宿主として期待されている。しかし、当雑種の生殖腺は精巣様に分化するため、これらを宿主としてドナー由来卵が生産された例は無い。本研究では、不妊化雑種を三倍体化することで卵巣分化の誘導が可能か? さらに、卵巣様生殖腺がドナー由来卵を生産できるか? について調べた。ニベ卵にシログチ精子を媒精後、低温刺激による三倍体化処理を行った。7ヵ月齢成魚の鰭を用いて、PCRによる雑種判別およびフローサイトメトリーによる倍数性判定を行った。雑種三倍体と判定された個体の生殖腺組織観察およびcDNAを用いたRT-PCRを行い、生殖腺の形態、性特異的マーカーの発現様式を調べた。続いて、雑種三倍体の宿主としての有用性を調べるため、成魚8尾の生殖腺内へGFP遺伝子導入ニベから調整した卵原細胞を移植し、9ヵ月後に配偶子形成の有無を調べた。配偶子が得られた場合には、野生型ニベとの交配試験を行い、F1世代(孵化仔魚)がGFP遺伝子を保持するか否かを調べた。7ヵ月齢の成魚80尾中、38尾(48%)が雑種三倍体となり、その生殖腺は生殖細胞を欠損していた。そのうち10尾では精巣様生殖腺が、12尾では卵巣腔を有する卵巣様生殖腺が観察された。卵巣様生殖腺では、雄特異的dmrt1は発現せず、雌特異的foxl2、cyp19a1aが発現していた。生殖細胞移植試験の結果、雌雄各1尾の宿主がGFP陽性を示す配偶子を生産し、それらのF1世代仔魚は全てGFP陽性を示すドナー由来子孫であることが確認された。以上により、ニベ×シログチ雑種を三倍体化することで、生殖細胞を欠損した卵巣様生殖腺の分化が誘導されること、卵巣様生殖腺への生殖細胞移植により機能的な卵生産が可能であることが示された。
3: やや遅れている
実験期間中に実験魚(ニベ科不妊化雑種)を斃死させてしまい、再度、実験魚の種苗生産を行ったことにより、実験計画に遅れが生じている。
2019年3月1日に、鹿児島大学水産学部から、金沢大学理工学域能登海洋水産センターに転出した。本研究課題で対象としているニベ科魚類にとっては、水温環境が異なるため飼育環境の改善が必要である。閉鎖循環型水槽を使用して、加温した水槽を用いることで、ニベ科魚類を用いた研究が遂行できるように対応する。
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Biology of Reproduction
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