研究実績の概要 |
本研究では、魚類において初めて生殖細胞を欠損する不妊化卵巣内へのドナー生殖細胞の移植を行い、ドナー由来の機能的な卵の生産に成功した。本研究で宿主として用いたニベ×シログチの種間雑種は生殖細胞欠損型の不妊となるが、その生殖腺は精巣様に分化する。しかし、この不妊化雑種を三倍体化すると卵巣様の生殖腺が分化することが組織学的かつ分子生物学的に確認されていた。今年度は、さらに、卵巣様生殖腺がドナー由来卵を生産できることを証明した。一方で、卵原細胞をドナーとして二倍体雑種宿主の精巣様生殖腺内に移植したとき、ドナー卵原細胞に由来する精子が生産された。この精子を用いて、次世代子孫を作出したところ、それらの性別は全てメスとなった。これは、XX型の性染色体を有する卵原細胞が精子へと分化したため、全ての精子がX染色体を有した結果と考えられる。このことは本生殖細胞移植技術が、養殖用種苗の性統御、すなわち、全メス種苗生産を可能にする新たな手法として期待できることを示している。以上の結果を、英語原著論文として発表した(Xu et al. 2020 Production of donor-derived eggs after ovarian germ cell transplantation into the gonads of adult, germ cell-less, triploid hybrid fish. Biology of Reproduction)。
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