研究課題/領域番号 |
18K05827
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
奥 直也 富山県立大学, 工学部, 講師 (90525388)
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研究分担者 |
神谷 充伸 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (00281139)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | タテヤママリモ / Aegagropilopsis / エーテル脂質 / スルホキノボシルアルキルグリセロール / ヒメフカミドリシオグサ / アオミソウ / アオサ藻綱 / SQAG |
研究実績の概要 |
緑藻植物門アオサ藻綱シオグサ目アオミソウ科のタテヤママリモ(Aegagropilopsis moravica)から発見した新規エーテル脂質「スルホキノボシルアルキルグリセロール(SQAG)」の生理的・生態的機能を明らかにするために、アオサ藻綱内における本脂質の分布を調査することが本研究の目的である。 1) 緑藻類の収集:新たに和歌山県白浜町にて1種、千葉県館山市坂田にて4種、富山県高岡市内にて淡水種・海水種をそれぞれ1種ずつ、計7種の緑藻を採集した。またこれらとは別に維持していた4種を培養し、0.3~9.7 gの藻体を得た。 2) 藻類抽出物からのSQAGの簡便検出法の確立:緑藻類はトリグリセリド、ガラクトグリセロ脂質、スルホキノボシルアシルグリセロールなどを多く含むことから、これらを除去してSQAGを検出する手法の開発が望まれた。タテヤママリモを用いて種々検討した結果、順相分離による簡便な前処理法と二次元NMR法を組み合わせた定性的迅速検出法を確立した。本法によれば最短2日で藻体中のSQAGの有無を検出できる。 3) SQAGのアオサ藻綱内分布調査:開発した検出法を用い、シオグサ目を構成する3クレードから6種類を選びSQAGの有無を調査した。その結果、SQAGが検出出来たものはマリモクレードに属するアオミソウの一種(Pithophora sp.)とヒメフカミドリシオグサ(Pseudocladophora horii)のみであり、シオグサクレードに属するフトジュズモ(Chaetomorpha spiralis)またクダネダシグサクレードに属するホソバロニア(Valoniopsis pachynema)、アミモヨウ(Microdictyon japonicum)、クダネダシグサの一種(Siphonocladus rigidus)からは検出できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の初年度に実施予定であったアルキルグリセロールのキラル分析用標品の合成や分析システムはできていないものの、特殊な生態を持ち入手の難しいマリモクレードの試料が入手出来ており、試料収集については予定以上の成果を挙げている。また計画には無かったSQAGの定性的分析方法を新たに確立し、その分析法にて最終年度に計画していたアルキルグリセロール分布マップ作成に着手している点も、想定以上の成果である。以上を総合的に勘案すると、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果より、SQAGはマリモクレード内特有の物質である可能性が出てきた。そこで以下のように研究を推進する予定である。 1) 緑藻類の収集:Basicladia属のカイゴロモなど、マリモクレード内のタテヤママリモ近縁種を入手し、SQAGの有無を検定する。 2) SQAGのアオサ藻綱内分布調査:今年度確立した定性的分析法および分子種と立体異性体を同定できる板橋法にてこれまでに収集した試料の分析を進める。 3) SQAGのアオサ藻綱内分布調査:上記分析結果をアオサ藻綱の系統図に投影し、SQAGの分布状況を明らかにし、その生理学的・生態学的意義を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年同様、SQAG中のアルキルグリセロール分子種のキラルLC-MS分析システムの立ち上げが進まなかったため、キラルカラム購入費分が差額として生じた。次年度に繰り越すため、使用に関して特に問題はない。
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