研究課題/領域番号 |
18K05828
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
水澤 奈々美 (川口奈々美) 北里大学, 海洋生命科学部, 特任助教 (70813757)
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研究分担者 |
渡部 終五 北里大学, 海洋生命科学部, 特任教授 (40111489)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | イカ塩辛 / メタゲノム解析 / メタボローム解析 / 官能検査 / 水産発酵食品 / 塩分 / 細菌叢 |
研究実績の概要 |
本年度は、作製した2種類の塩辛、すなわち低塩分・低温 (塩分5%、保蔵温度5℃、保蔵期間7日間)、および糀を添加し高塩分・常温熟成(塩分12%、保蔵温度24℃、保蔵期間4日間)で製造した試料についてCE-TOF-MSを用いたメタボローム解析を試みた。CE-TOF-MSでは上記の塩辛試料より178のピークについて候補化合物が付与された。また、低塩分・低温製造区と比べて、高塩分・常温熟成製造区では呈味や香気に関係するアミノ酸に加え、乳酸、リンゴ酸およびコハク酸などの有機酸で熟成に伴う増加が認められた。 また、塩の種類(精製塩と天然塩)と高塩分区における糀添加が塩辛液状部の細菌叢に及ぼす影響を検討するため、低塩分・低温製造および高塩分・常温熟成製造の試料を調製した。その結果、製造開始時の細菌叢は,ロット間でやや違いが認められるものの,糀添加以外は用いた塩の種類および塩分には大きな影響は受けず, Pseudomonas属が優占する傾向にあった。一方,糀添加の高塩分区では、用いた塩の種類に差はなく、Leuconostoc属が優占した。次に、製造完了時の細菌叢を調べたところ、低温製造の7日目ではPseudoalteromonas属が優占するロットが多かったが、Acrobacter属が優占するロットもみられた。一方、高塩分・常温熟成製造4日目では、糀の添加の有無に関係なく,ほとんどのロットでStaphylococcus属が優占する傾向が認められたが、PseudomonasあるいはMycoplasma属が優占するロットもみられた。このように、イカ塩辛の細菌叢は、用いる塩の種類には影響されないことが明らかになった。また,細菌叢に及ぼす糀の添加は製造開始期のみで、製造中にいずれの試験区でも細菌叢は変化した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、メタボローム解析を主に行なった。昨年度はLC-Q-TOF-MSを用いた定量を試みたが、一部の有機酸については定量法の確立には至らなかった。そこで本年度はCE-TOF-MSを用いてメタボローム解析を行なった。CE-TOF-MSを用いるメタボローム解析では、呈味や香気に関するアミノ酸や有機酸についても検出が可能となり、昨年度にLC-Q-TOF-MSでは定量法を確立できなかった乳酸についても定量が可能となった。いずれの試験区においても製造過程における代謝産物の変化を可視化することができた。 また、昨年度に製造したイカ塩辛では、製造ロットによる細菌叢の変化が大きく、品質も安定しなかった。そこで本年度は、同一ロットの冷凍スルメイカを原料として塩辛を製造し、塩の種類(精製塩と天然塩)と高塩分区における糀添加が塩辛液状部の細菌叢に及ぼす影響を検討した。その結果、製造開始時の細菌叢は、塩の種類や塩分よる変化は少なく、糀の添加が大きな影響を及ぼした。一方、製造完了時の細菌叢では、糀の添加の影響はなくなった。これらの結果を得られたことから、概ね順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
イカ塩辛の塩漬けおよび熟成において細菌数の把握は重要な課題であることから、定量PCRを用いた細菌数の定量法の確立を試みる。また、塩分、温度、糀添加の有無および保蔵日数を変化させた塩辛を作製し、細菌数および細菌叢の変化、遊離アミノ酸等の代謝産物の定量を行い、官能検査と組み合わせることにより、良質な塩辛を特徴付ける鍵物質および鍵微生物の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度のイカ塩辛の製造の原料であるスルメイカについて、一部を食品会社より分与していただき、予定していた原料代より安く済んだため。次年度使用分については、細菌数の定量法の確立に充てたいと考えている。
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