研究課題
平成31年/令和元年度、本研究では、ヒラメをモデルとし、炭酸、2-フェノキシエタノールそして水産承認麻酔であるオイゲノールを含むFA100をもちいて、背地を変えた水槽での覚醒時におけるストレス指標因子である血中グルコース・L-乳酸量・コルチゾルの測定、ひいてストレス関連組織である脳・脳下垂体・腎臓、そして麻酔剤を取り込む鰓の遺伝子を調整し次世代シークエンサー解析に供した。なお、令和元年度から両側回遊魚イトヨをもちいた実験は、サンプル入手が極めて困難となったため、ヒラメの実験に集中することとした。まず、ヒラメの脳の活動を可視化することを試みた。飼育密度や水温変化そして各種嫌悪物質の添加したところ、4%苦汁海水3時間浸漬区にて全ての魚がストレスを感じ、体色が変化した。なお5%苦汁海水3時間浸漬区では半数程度、6%苦汁海水3時間浸漬区では全ての個体が死亡した。そこで、4%苦汁海水3時間浸漬区の個体を上記3種の麻酔剤にて麻酔をかけ、それぞれを撮影、Image Jにて解析した。その結果、炭酸では、麻酔前後で体表色彩の変化は認められなかったが、他の区では数値が有意に増加した。いっぽう、麻酔剤間の血中グルコース・L-乳酸量・コルチゾルに著しい差は認められなかった。このことから、体表色彩が脳活動の律速指標であること、炭酸麻酔下では脳活動が緩慢になりストレスが軽減されることが考えられた。以上のように、今年度は脳活動の可視化、数値化を成し遂げ、実験が大きく推進した。現在、各麻酔剤で麻酔にかけた個体の脳、脳下垂体、鰓そして腎臓の次世代シークエンサー解析を行なっている。最終年度はそのデーターを麻酔剤間で比較し、ストレスに関するキー遺伝子の絞り込みをおこなう予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究初年度は北海道胆振東部地震による停電の影響で実施していた研究サンプルの調整ができなったが、平成31年/令和元年度、ヒラメの実験に集中し、体表色彩によるストレスの可視化を可能とし、次世代シークエンサー解析に供することまでできたため。
最終年度は、次世代シークエンサー解析から得られたデータを分析し、ストレスに関するキー遺伝子の絞り込みをおこなう予定である。ひいては、その遺伝子の発現解析、抗体作成など次の研究に発展すべきデータの集積をおこなう。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)
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