研究課題/領域番号 |
18K05832
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
廣井 準也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20350598)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超解像イメージング / 塩類細胞 |
研究実績の概要 |
優れた酸性耐性を示すウグイと酸性耐性が低く水産業上重要魚種であるサクラマス・タイセイヨウサケ・ニジマスについて、アンモニアの排泄・H+の排出・Na+の取り込みをつかさどるトランスポーター群について調べた。 淡水に順応させた上記の魚種すべての鰓上皮に、2種類の塩類細胞が明確に認められた。すなわち、Na+/H+交換体(NHE3)を頂端膜にそなえる塩類細胞とNa+/HCO3-共輸送体(NBC1)を側底膜にそなえる塩類細胞の2種である。 海水に順応させたタイセイヨウサケとニジマスでは、NHE3陽性細胞は大型化するのに対しNBC1陽性細胞は減少・消失した。これらの反応は、以前に報告したモザンビークティラピアのIII・IV型塩類細胞(=NHE3陽性細胞)とII型塩類細胞(=NBC1陽性細胞)の反応と一致している。今後、海水に順応させたサクラマスとウグイについても解析することにより、真骨魚類のイオン調節機構の共通性が明らかになると期待できる。 タイセイヨウサケ・ニジマス・ウグイについて、NHE3陽性細胞の頂端部にNHE3とアンモニアトランスポーターRhcg1が共局在することを確認した。共焦点レーザー顕微鏡とデコンボリューションソフトウェア(SVI Huygens Essential)を組み合わせた超解像イメージングによって、酸性環境や低イオン環境において、ウグイのNHE3陽性細胞の頂端部は大きく細胞内に陥入するのに対し、タイセイヨウサケとニジマスではNHE3陽性細胞の頂端部が逆に凸状を呈することが明らかとなった。前者に対して後者は頂端部近辺の外部環境のpHをRhcg1が排出するアンモニアによって高く保つのに不利な構造であることから、魚種による酸性耐性の違いはNHE3陽性細胞の頂端部の構造変化に起因する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はウグイを中心的な実験魚種としたが、今年度はサクラマス・タイセイヨウサケ・ニジマスを加えて比較することにより、真骨魚類のイオン調節機構の共通性と酸性耐性機構の特殊性について考察が深まるようになった。とくに、これまで塩類細胞に関する機能組織学的知見が限られていたサクラマスを扱えるようになったことは水産科学的に大きな進歩である。また、本研究課題の技術的な重点である超解像イメージング技術については、NVIDIA CUDAによるGPU accerelationが可能なワークステーション(Lenovo ThinkStation P330 Tiny)を導入することにより、デコンボリューションの時間が大幅に短縮されるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は淡水環境のみだったサクラマスについて、海水環境・低イオン環境・酸性環境を設定し、NHE3陽性細胞とNBC1陽性細胞の微細形態変化を超解像イメージング技術によって明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗アンモニアトランスポーター抗体について,ユーロフィンジェノミクス社のペプチド合成・抗体作製サービスを予定していたが,複雑な抗原デザインのため,今年度中の発注が不可能となった.次年度の出来るだけ早い時期に発注を計画している.
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