研究課題/領域番号 |
18K05832
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
廣井 準也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20350598)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超解像イメージング / 塩類細胞 |
研究実績の概要 |
アンモニアの排泄・H+の排出・Na+の取り込みという生理機構のすべてにおいて、Na+/K+-ATPase(NKA)が根本的な役割を担っている。近年、タイセイヨウサケにおいて、淡水環境と海水環境のそれぞれで強く発現するNKAのアイソフォーム(NKAalpha1a・NKAalpha1b)が発見され、両アイソフォームを単一細胞レベルで可視化することが可能になった。しかし、タイセイヨウサケの両アイソフォームに対して作成された抗体が、おなじサケ科に属するタイセイヨウサケやニジマスで機能せず、研究の進展が阻害されているのが現状であった。 本研究では、ノルウェー・ベルゲン大学との共同研究によって、ニジマスのNKAalpha1a・NKAalpha1bのそれぞれを特異的に検出できる抗体の作成に成功し、両者を区別して可視化できる免疫蛍光染色システムを確立した。これまで広く使われてきた、すべてのNKAアイソフォームを検出する抗体では、単純な淡水順応群と海水順応群とのあいだに、陽性細胞(塩類細胞)の局在部位の違い以外の大きな変化は見られなかったが、NKAalpha1aとNKAalpha1bを別々に可視化することによって、塩類細胞のタイプの入れ替わりなどのマクロな変化を明らかにすることができた。さらにこれらの抗体をもちいた染色システムは、ニジマスだけでなく、サクラマスでも機能することを確認した。両魚種について、共焦点レーザー顕微鏡とデコンボリューションソフトウェア(SVI Huygens Essential)を組み合わせた超解像イメージングによってNKAalpha1aとNKAalpha1bの細胞内局在変化を観察している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NKAの淡水・海水特異的アイソフォームについては、その生理学的重要性にもかかわらず、これまでタンパクレベル・単一細胞レベルのイメージングはタイセイヨウサケに限定されていた。今年度は、世界的な水産業上重要魚種であるニジマスに加えてサクラマスについても同時免疫蛍光染色が可能になり、水産科学的に大きな進歩といえる。また、本研究課題の技術的な重点である超解像イメージング技術については、NVIDIA CUDAによるGPU accerelationが可能なワークステーション(Lenovo ThinkStation P330 Tiny)によって、デコンボリューションの時間が大幅に短縮されるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
ニジマス・サクラマスについて、淡水環境・海水環境・低イオン環境・酸性環境を設定し、NKAalpha1aとNKAalpha1bの塩類細胞内微細変化を超解像イメージング技術によって明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗アンモニアトランスポーター抗体について,ユーロフィンジェノミクス社のペプチド合成・抗体作製サービスを予定していたが,複雑な抗原デザインのため,今年度中の発注が不可能となった.次年度の出来るだけ早い時期に発注を計画している.
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