研究課題
本研究課題では、in vitro(生体外)での生殖幹細胞に対するゲノム編集ツール導入技術を開発し、これら編集ツール導入細胞を直ちに代理親とする小型近縁種へと移植することによる代理親体内での短期間かつ小飼育スペースなゲノム編集配偶子生産法の確立を目指した。本年度は、前年度までに明らかにしたCRISPR/Cas9システムのゲノム編集ツール導入手法により処理されたトラフグ生殖細胞を宿主仔魚腹腔内へ移植し、宿主からドナー生殖細胞に由来する変異導入された配偶子の生産が可能であるか検証した。黒色色素合成関連遺伝子であるslc45a2を標的として設計したcrRNA、 tracrRNAおよびCas9タンパク質により形成されるRNP複合体をエレクトロポレーション(EP)によりトラフグ精巣細胞へと導入した後、それらEP処理細胞をクサフグ宿主仔魚腹腔内へと移植した。飼育養成の後、1歳齢のクサフグ宿主について成熟度合を調査したところ、一部の成熟した雄から精液が得られた。得られた精液からDNAを抽出し、トラフグDNAの有無を検出できるプライマーを用いてPCR解析したところ、それらのサンプルからトラフグDNAが検出された。よって、これらのクサフグ宿主は移植されたドナー由来のトラフグ精子を生産していたことが明らかにされた。一方で、これらクサフグ宿主が生産したトラフグ精子についてT7エンドヌクレアーゼI(T7EI)解析により標的遺伝子への変異導入の有無を調査したものの、いずれのサンプルについても標的遺伝子への変異導入は認められなかった。本研究では結果として標的遺伝子への変異導入はかなわなかったことから、今後、ゲノム編集ツールであるRNP複合体の導入効率や導入細胞の分取濃縮などについて検討していく必要がある。
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Aquaculture
巻: 526 ページ: 735385~735385
10.1016/j.aquaculture.2020.735385