研究課題/領域番号 |
18K05838
|
研究機関 | 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター) |
研究代表者 |
野津 了 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 研究員 (70774397)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 卵食型サメ類 / 胎仔栄養摂取 / 卵巣 / 栄養卵 / 排卵 |
研究実績の概要 |
ホホジロザメやシロワニが示す「卵食共食い」は極めて特殊な繁殖様式である。卵食共食いでは、胎仔が子宮内で母体の卵巣から供給される栄養卵を摂取することで栄養吸収を行っている。これらの種は、産仔数が少なく、大きな子どもを産むという特徴がある。一方で、受精卵の卵径は10mm前後と小さいため、大きな胎仔の発育には栄養卵が極めて重要な役割を果たしている。しかしながら、栄養卵に関してはいずれの先行研究においても「未受精卵」と記述されているのみであり、栄養卵の実態は全く不明である。そこで本研究では、卵食共食い型サメ類の栄養卵に焦点を当て、受精卵およびそれらの形成過程を形態学的・組織学的・生化学的・分子生物学的に詳細に比較・検討することで、栄養卵の実態を明らかにすることを目指す。 本年度は課題遂行に必要サンプルの確保が中心となった。複数回に渡りネズミザメのサンプル採取に赴き、①未成熟個体からの卵巣②妊娠前個体からの卵巣③妊娠個体(胎仔卵食期)からの卵巣および栄養卵を採取することができた。採取した卵巣からtotal RNAを抽出し、クオリティを確認した後、RNA-seqに供した。現在解析を進めている。 昨年度、排卵が全く確認されないオオテンジクザメが観察されており、その個体の性ホルモンは低値で推移していることが確認されていた。本年度、当該個体が妊娠および栄養卵を供給していたことが観察され、性ホルモンの値の上昇も認められた。これらのことからオオテンジクザメの断続的な排卵または栄養卵の形成に性ホルモンが関与していることが強く示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析に必要なサンプルの確保に努めているが、ネズミザメの受精前後および妊娠直後のサンプルが得られていない。該当サンプル採取可能な時期が秋に限定されているため、それまで本年度採取したサンプルの解析を進める。
|
今後の研究の推進方策 |
ネズミザメの不足しているサンプルを補完するため、秋にサンプル採取に再度赴く。その際には現地漁業関係者と連絡を取り、該当サンプルの出現が確認された後に現地に向かう。サンプルの補完までに、先行しているRNAseqデータを用いてトランスクリプトーム解析に必要なリファレンス配列の整備を行う。 断続的な排卵と性ホルモンとの関係を明らかにするため、雌オオテンジクザメに対し1週間程度の連続採血およびエコー検査を行う(妊娠直前の6月および栄養卵供給中の10月)。
|
次年度使用額が生じた理由 |
RNAシーケンシングの委託を予定していたが、サンプル採取の時期が当初の想定より遅れ、委託が年度末となってしまい、納品が年度内に完了しなかったため。4月中のデータ納品が予定されているため次年度早期に未使用額は執行予定となる。
|