研究課題/領域番号 |
18K05839
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
近藤 巧 北海道大学, 農学研究院, 教授 (40178413)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | インドネシア / 水利組合 / インフラ / オークション |
研究実績の概要 |
これまで、調査地域で特徴的な水利制度であるレランシステムの普及状況を把握した。今年度は、これらの制度の変化を把握することを目的とした。2016年時点、調査地域であるクランブウィラルン幹線水路受益地におけるレランシステムの普及率は68%であった。今年度の調査の結果、2021年時点、レランシステムの普及率は74%に上昇しており、レランシステムの普及が進んでいる。予備的に実施したウィラルン幹線水路受益地以外の幹線水路受益地においても普及の兆しが確認された。前回の調査から今回の調査にかけて、これまでレランシステムを採用していなかった水利組合がレランを導入した理由として(1)村主導によるレランシステムの採用、(2)資金管理の透明性、が挙げられる。また、いずれのケースにおいても組合長に就任することの経済的メリットが認められた。組合長は在任期間中の水利費を自身の収入として得る権利を有しており、維持管理費を差し引いた残余が組合長に帰属する。水利制度の変化は組合の総会において多数決を経て決定される。レランシステムが普及する背景には、迅速なインフラ投資を志向する農家と資金を提供し水利費を獲得できる組合長の経済的メリットがある。レランシステムにおいて、スワクロラシステムとレランシステム両方の特徴を有する制度(レラン・スワクロラシステム)の普及も見られた。レランシステムでは通常、村内に居住する者であれば誰でもオークションに参加し組合長を目指すことが可能だが、レラン・スワクロラシステムでは、入札に参加する権利は農家に限定される。このように制度が変化した理由の一つとして、組合長が農業経験をもたない場合、水利施設の維持管理に対する農家の満足度が低いことがあげられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の影響により、今年度はリモートによって農村調査を実施した。現地調査ができなかったため、より詳細に現地の状況を把握することができなかったことによる。
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今後の研究の推進方策 |
現地の水利組合の調査をする予定であるが、不可能な場合には、インドネシアの研究協力者と連携をとりながらリーモートでの調査を実施する。今後はKlambu kanang幹線水路の受益地で調査を実施する。また、 今年度、予備的に行った周辺地域でも調査を実施し、新しい水利制度の普及動向を把握するとともにその評価に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
インドネシアで予定していた調査がCOVID-19により不可能となったため。次年度の農村調査資金に充当する。
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