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2018 年度 実施状況報告書

社会制度とネットワークの形成:マダガスカルにおける新農業技術普及を事例に

研究課題

研究課題/領域番号 18K05855
研究機関関西学院大学

研究代表者

栗田 匡相  関西学院大学, 経済学部, 准教授 (60507896)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード技術普及 / ネットワーク / マダガスカル / フィールド実験 / 制度形成
研究実績の概要

既存研究からは、生活環境や文化、規範、あるいは民族、人種といった差異が、人間行動そのものに関しても大きな差異をもたらす要因として機能しているという制度や歴史的要因の固有性、特殊性の存在を指摘出来る。こうした視点から見ると、実験室内で行われる実験室実験のように実験統制によって制度や社会規範の影響を排除した検証を行うのではなく, むしろ制度や社会規範を積極的に実験の枠組みに取り込み、制度や社会規範が人間行動を規定するとともに, 人間行動が制度や社会規範を形成・維持する態様を明らかにするような実験計画を生み出していくことが必要であろう。またこうした実践的研究は学術的な意味で重要というだけではなく、実際の政策論としても極めて重要なものとなっている。本研究では貧困状況の著しいサブサハラアフリカの国を研究対象としているが、こうした国に対しての研究では、政策論的な意義の重要性を担保することは重要である。しかしながらこうした研究の必要性はかねてから指摘されているものの、その研究蓄積は非常に乏しい。
そこで本研究では、マダガスカルにおける稲作技術(PAPRIZ)普及のための住民組織形成と社会ネットワークの構築という具体的な制度形成のプロセスについて、RCT(Randomized Controlled Trial)による実験計画を導入した分析を行う。具体的には、化学肥料と農法を記したガイドブックが同封された新技術導入パックをマダガスカルの複数の村内で配布する実験になるが、制度形成のプロセスが異なる配布方法を複数用意し、どのタイプの配布方法でもっとも効率よく技術の普及が行われるか、並びに稲作の生産性が向上するのかを観察するものである。現地で農業技術の普及を行っている団体(PAPRIZ)との共同研究として行うことで、学術的な価値だけではなく、政策論としての貢献も極めて高い研究となっている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2018年度中に計画していた調査に加えて、セネガルでの社会経済調査を行うことが出来た。まず、2018年8月に行ったセネガルの調査では、伝統的に制度形成のプロセスに積極的に関わりを持ち、制度・人材の形成、育成に重きを置こうとする日本型の途上国援助と、資金援助をメインとし住民の自発性に援助の重点を置こうとする欧米ドナー型の途上国援助のそれぞれを模したグループの介入を行い、どちらがより援助の効果が観察されるのかを検証した。本研究の主たるテーマである制度形成においてこうした実験の成果から得られる知見は極めて大きく、仮に援助の成果において、制度形成や人材育成の意義が余り見られないということであれば、少なくとも本研究の政策論的な意義は大きくはないだろう。実験の成果としては、当初予定していたサンプル数をかなり下回る結果となったが、日本型支援が欧米型の支援よりも援助効果において有意に正の影響があることがわかった。この実験の成果は単に日本型の支援が欧米型よりも効果の点で優れているということを示しているだけではなく、本研究で重視している制度形成が援助効果においても大きな影響を持っていることを示唆しており、大変有意義な実証実験になった。
また、2019年2月に行ったマダガスカル中央高地での調査では、30ヶ村弱の村々を回り、2019年度中に行う制度形成の実証実験に関する予備的調査を行った。2018年度以前から訪問した村をあわせると70ヶ村程度が今回の実験対象となり、今後の実証実験に向けて十分な数の調査・実験対象村の情報を得ることが出来た。

今後の研究の推進方策

2019年度は3回の調査を予定している。それぞれ2019年8月、12月、そして2020年2月である。まず2019年8月には、化学肥料と農法を記したガイドブックが同封された新技術導入パックをマダガスカルの複数の村内で配布する。その後、2020年2月の調査でその成果を調査する。配布の方法については、村内に従来から存在するネットワーク・組織を使って配布、費用の回収を行う方法と、本実験のためにランダムに選ばれた住民によって作られた組織を用いた配布・回収方法の2つのタイプがあるが、更に後者には制度形成の働きかけを促すものと、それを行わないものの2つがあり、合計で3つの方法が混在する。どのタイプの配布方法でもっとも効率よく技術の普及、定着が行われるか、並びに稲作の生産性が向上するのかを2020年2月調査、また2020年度の調査も含めて、長期的に観察していく。
また2019年12月の調査では、上記配布実験の中間的な視察のみならず、農業技術普及における普及員の役割を検証すべく、PAPRIZ普及員に対する大規模なインタビュー調査を行う。いわゆるRetrospectiveな調査がメインになるが、セネガルの実験でも明らかになったように、制度形成における制度構成員の役割は大きく、技術普及の成否において、どのような普及員がよいパフォーマンスを示しているのかを調査検証することは重要である。本調査では、Retrospectiveな設問項目に加えて、普及員の利他性や認知能力、非認知能力についても調査し、これらの知見を実証実験の成果とあわせて利用することで、よりよい研究となるよう努める。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Gender difference in the relationship between multidimensional poverty and subjective well-being in Madagascar: Spatial micro econometric approach2018

    • 著者名/発表者名
      Kyosuke Kurita
    • 学会等名
      HEIRS 2018 international conference
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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