研究課題/領域番号 |
18K05859
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 清一 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (60334174)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 農村多角化 / 社会生活指標 / 農村生活 / 健康 |
研究実績の概要 |
令和元年度は,国内調査地(農産物直売所)を確定させたのち,対象地にて直売所への出荷行動と健康関連QOL双方を考慮した出荷者調査を行い,データを収集した。また,農村の環境を考慮した客観的QOL指標の試作を行った。具体的には以下の3点に取り組んだ。 1)農産物直売所に出荷する生産者を対象とし,基本的属性,出荷行動の実際,経済的成果,社会的評価,健康関連QOL(SF-36フォーマットを使用)について回答する質問紙調査を実施した。群馬県A直売所(平野部)では対面式で調査を行い,質問紙の記載内容以外にも広範な聞き取りを同時に行った。A直売所では45名よりデータを収集し,今も継続中である。群馬県B直売所(中間地帯)では,88名の出荷者より自記式でデータを収集した。データの分析は現在進行中であるが,出荷者は直売所での出荷に主体的に取り組んでいるものの,高齢化により将来的な出荷拡大を躊躇する傾向が強いことが明らかになりつつある。 2)農業および農村環境を考慮した客観的QOL指標を試作し,千葉県の全市町村および鴨川市の旧村を対象にデータを適用して地域間比較を行った。指標の試作過程において,一つの比較視点に複数の指標を盛り込むことが,特定指標の大小に由来する総合QOL得点の過大な変化を抑制するために有効であることを明らかにした。千葉県市町村を対象に試算した総合QOL得点を比較すると,大規模な畑作農業が展開する県東部や,生活関連の指標が高得点である南房総地域の市町村にて総合得点が高い傾向がみられた。また,農業・農村関連の指標については,旧村あるいは集落レベルの比較や,時系列分析も可能であることを明らかにした。 3)本研究課題に関連して,台湾のオーガニックファーマーズマーケット調査,並びに農業経済学会より委託された事典編纂業務にかかわる体験農園,農村ツーリズムの文献レビューを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は2か所の直売所出荷者を対象に質問紙調査を実施し,想定を上回る出荷者データを収集できた。新型コロナウィルス流行の影響で対面式調査がまだ終了していないが,今後の研究遂行に必要なミニマムのデータは収集できた。 健康関連QOLを分析するために必要な専用分析ポータルとの契約も完了した。 客観的QOL指標の試作も完了し,学会発表も終了した。近日中に論文も刊行予定である。 海外研究の準備が遅れているが,全体を見れば,昨年度の遅れを回復し,おおむね順調に進展していると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には,以下の点に取り組むとともに,研究全体の総括を行う。 1)群馬県A直売所での対面式調査を継続するとともに,B直売所で収集したデータもあわせ,直売所出荷者の出荷行動,経済成果,生活満足度,健康関連QOLとの相互関係を定量的に明らかにする。 2)昨年度試行した農業・農村客観的QOL指標を群馬県の調査地にも適用し,昨年度の試行結果および直売所出荷者調査の結果とも比較しながら,農業・農村客観的QOL指標の修正を行う。 3)タイ農村の経済多角化活動(OTOP)の事例調査を行う。その際,QOL指標も導入し,日本とタイの比較考察を行う。 なお,新型コロナウィルスの影響が長引く場合は,1)は中断し,すでに収集したデータのみで分析を行う。また,海外調査ができない可能性もある。場合によっては,研究計画の1年延長も視野に入れて研究を遂行することにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内調査対象地が職場および自宅の近くに決まったこと,また海外調査が実施できなかったことから,旅費の支出が想定を大幅に下回った。また,健康関連QOLの分析に必要なポータルへの登録・アクセス料が,契約先の好意により大幅に減額された。加えて,統計資料の購入を予定していたが,必要な統計情報のかなりの部分が政府の統計ポータルから直接無料で入手できることがわかり,図書購入費も想定を大幅に下回った。 次年度は,海外調査を実施予定であること,国内学会の開催地も遠方に集中しているため,かなりの出費が見込まれる。
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