(最終年度の成果) 欧米型ファーマーズ・マーケット出荷者と日本式直売所出荷者の総合満足度分析を発展させ、前者の満足度が後者の満足度を上回る要因の分析を行った。直売施設が持つ関係者間の交流機能を比較すると、ファーマーズ・マーケットでは生産者と消費者との対面に基づく交流が重視されているのに比べ、日本式直売所では生産者間の交流が重視されており、この違いが出荷満足度の大小に影響していることを明らかにした。 (研究機関全体の成果) 先行研究レビューより、農業・農村QOLを把握・測定する視点として、地域社会の農業関連指標の充実度をもとに測る客観的QOLと、農業者が個人レベルで評価する主観的QOLの2視点を分析枠組として設定した。客観的QOLを計測するため、千葉県の市町村ないし集落単位で農業および生活環境に関する統計データを組み合わせ、QOL指標を試作した。計測の結果、大規模畑作が展開する県東部や、生活環境に関する指標が高得点である南房総地域のQOLスコアが高いことが明らかになった。また指標構築にあたり、一つの分析視点になるべく複数の統計データを盛り込むことで、特定のデータの大小によるQOLスコアの揺らぎを抑制できることも分かった。続いて主観的QOLを測定するため、台湾のローカル・フードシステムを支える直売施設の出荷者が評価する総合満足度と、その構成要因を分析した。日本式直売所より欧米式ファーマーズ・マーケットの出荷者の方が満足度は高かった。満足度の構成要因として、施設までの距離が小さいことと、出荷の継続により派生する心理的満足感が重要であることを明らかにした。最後に、近年QOL分析で重視されている健康関連QOLを、群馬県の直売所出荷者を対象に計測・分析した。精神・心理面の健康QOLは全国平均を上回っていたが、身体機能面のQOLは下回っていた。これは出荷者の高齢化に由来すると推測できる。
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