• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2018 年度 実施状況報告書

激変する労働市場環境下での農業構造展開の地域性に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 18K05860
研究機関東京農工大学

研究代表者

山崎 亮一  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10305906)

研究分担者 新井 祥穂  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (40345062)
曲木 若葉  農林水産省農林水産政策研究所, その他部局等, 研究員 (80794221)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード農業構造 / 地域労働市場 / 農業生産法人 / 農業地帯構成 / 農業地域類型 / 中山間 / 東北型 / 近畿型
研究実績の概要

研究代表者と研究分担者とは、研究計画に従い、2018年度中に青森県五所川原市にて、農家40戸を対象とした集落調査と、五所川原北部土地改良区を対象とした機関調査を実施して、それぞれで聞き取りを行うとともに、関連する資料を収集した。目下、この調査で得た情報の整理と分析を行っているところである。
他方で、研究代表者と研究分担者とは、当年度中に、本研究課題と関わって、いくつかの学術論文を査読誌を通して出版することができた。そのうち、山崎亮一・新井祥穂・曲木若葉「『近畿型中山間』における地域労働市場と農業構造」『歴史と経済』240: pp. 19-34は、2019年度の調査予定地である長野県上伊那地方に関するこれまでの研究をまとめたものであるが、以下はその要旨である。
この論文の課題は、第一に、「近畿型にして中山間」の概念を措定することであった。これは、古典的な日本農業地帯構成論と、農業地域類型区分とを統一させる試みの一環であった。第二に、対象地の組織経営体が地域の農業構造に規定されながら、どのような方向へ向かっているかを明らかにすることであった。
論文の中で明らかになったことは以下の通りである。対象地では、土地利用型農業における生産の担い手は法人経営に収斂していく傾向にあるが、それは二類型に分けられる。すなわち、「中核的な法人」と「衛星的な法人」である。「中核的な法人」は、農業生産力の担い手として、高い就業条件を享受する青壮年構成員によって運営される。しかし、単純労働作業は不安定な就業条件におかれた労働者によって行われる。他方の「衛星的な法人」は、条件不利地をも含めた農地の維持を使命としているために、 構成員に対して高い就業条件を提供するのは困難である。それゆえにこの組織は、地域奉仕の精神に満ちた、農外就業から引退して比較的恵まれた年金を受ける、高齢者によって運営されている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「研究実績の概要」のところで既に述べたように、研究代表者と研究分担者とは、2018年度中に、当初の研究計画に従って、青森県五所川原市にて、農家40戸を対象とした集落調査(12月6~9日)と、五所川原北部土地改良区を対象とした機関調査(10月30日)を実施して、それぞれで調査項目に基づいた聞き取りを当初意図していた予定の通りに行うとともに、関連する資料を収集した。さらに、現在は、この調査で得た情報を整理しながらその分析を行っているところである。
また、研究代表者は、2018年8月28日に、2019年度秋に調査を実施する予定である長野県宮田村に赴いて、調査対象となる集落の有力者と面談を行い、その場で次年度に実施する調査への協力を要請したところ、協力に向けた前向きの回答を即座に得ることができた。宮田村の調査地では、2019年に行おうとしている集落調査と同様の調査を、当研究課題のメンバーが2009年に実施した経緯がある。また、その後も年に2回程度の頻度で定期的に宮田村を訪問して、役場・JA等の農業関係諸機関や農業生産法人・集落営農組織を対象とした調査活動を行ったり、調査結果を報告するためのセミナーを開催している経緯も他方ではあるので、当研究課題のメンバーと調査対象地の方々との間にはある種の信頼関係が醸成されている。そのため、調査に対する協力が得られやすくなっている。
このような形で実際に実態調査を進めたり、また次年度の調査に向けた準備を行う一方で、研究代表者と研究分担者とは、研究課題に取り組むうえで必要不可欠な理論的な論点整理行い、あるいはこれまでの研究成果の整理を行っており、その結果を、後に示す「研究発表」のリストに掲載している論文や学会報告の形で世に問うてもいる。

今後の研究の推進方策

「研究実績の概要」や「現在までの進捗状況」のところででも既に述べたように、2019年度には長野県上伊那郡宮田村の某集落の農家40数戸を対象とした聞き取り調査を実施する予定である。また、同村では、2010年代後半に入って、全村をエリアとしながら稲作基幹作業を受託する形で地域農業を支えている農事組合法人が立ち上がったところであるが、この法人について、研究代表者と研究分担者とは、法人成立直前から毎年訪問して聞き取り調査を行っており、その動向を注視しているところである。そこで、2019年度中にも、継続してこれまでと同様の聞き取り調査を行う予定である。
また、2019年度には、2018年度中に実施した、青森県五所川原市における農家40戸を対象とした集落調査と、五所川原北部土地改良区を対象とした機関調査で得た情報の整理と分析を行って、その結果を学会誌論文や学会報告の形で世に問う予定である。
なお、2018年度に既に実施した青森県五所川原市における調査と、2019年度に実施する予定の長野県宮田村の調査をもって本研究課題が当初に計画していた調査を全て終えることとなるが、これらの調査で得られた知見に基づく研究成果については、これまで述べてきたような学会誌論文や学会報告の形で世に問う一方で、さらにそれに加えて、学術図書を刊行する形ででも社会に還元することを意図している。そこで、2019年度中には、この著作の章編成を考えたうえで、それに基づいて原稿を作ったり、あるいは出版社と交渉を行うなどのことを行って、可能であるならば2020年度中に図書を刊行することができるよう、それに向けて準備作業に着手する予定である。

次年度使用額が生じた理由

本研究課題では、ほぼ2018年度に当初に計画していた通りの調査研究および研究成果の社会還元を実施することができたが、そのために必要な経費は、本研究課題で支給された研究資金に加えて、格安チケットを購入することができたために、十分に確保することができた。そのことによって余剰が生じてきた本研究課題の研究資金は、2019年度に実施する予定の調査研究のための研究予算の中に充当する予定である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 地域労働市場の今日的地域性と農業---秋田県雄物川町と長野県宮田村の比較分析2019

    • 著者名/発表者名
      曲木若葉
    • 雑誌名

      農林水産政策研究

      巻: 早期公開 ページ: 1-22

    • DOI

      www.maff.go.jp/primaff/kanko/seisaku/attach/pdf/190118_sk1901_01.pdf

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 日本農業の構造変動について2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 雑誌名

      歴史と経済

      巻: 238 ページ: 44-50

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『近畿型中山間』における地域労働市場と農業構造---長野県上伊那地方における組織経営体の2類型と経営体内所得格差2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一・新井祥穂・曲木若葉
    • 雑誌名

      歴史と経済

      巻: 240 ページ: 19-34

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 資本制社会の『純粋化』傾向と農業---1960年代以降の日本を対象とした例証2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 雑誌名

      農業経済研究

      巻: 90(2) ページ: 91-107

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] さとうきび大規模経営の展開と農業構造─八重山地域を例に2018

    • 著者名/発表者名
      新井祥穂・永田淳嗣
    • 雑誌名

      砂糖類情報

      巻: 2018年7月号 ページ: 48-60

    • DOI

      https://www.alic.go.jp/joho-s/joho07_001764.html

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 書評: 堀口健治編『日本の労働市場開放の現況と課題---農業における外国人技能実習生の重み』2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 雑誌名

      農業経営研究

      巻: 56(3) ページ: 94-95

  • [学会発表] 座長報告「日本経済の蓄積基盤の変容と農業構造変動」2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 学会等名
      日本農業経済学会2018年度大会特別セッション1「日本経済の蓄積基盤の変容と農業構造変動」
  • [学会発表] 地域労働市場構造の収斂化傾向について2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 学会等名
      日本農業経済学会2018年度大会特別セッション1「日本経済の蓄積基盤の変容と農業構造変動」
  • [学会発表] ローザ・ルクセンブルク再生産表式論再論2018

    • 著者名/発表者名
      山崎亮一
    • 学会等名
      農業問題研究学会2018年度秋季大会
  • [学会発表] 沖縄の地域労働市場と農業構造---県内地域差に注目して2018

    • 著者名/発表者名
      新井祥穂
    • 学会等名
      日本農業経済学会2018年度大会特別セッション1「日本経済の蓄積基盤の変容と農業構造変動」
  • [学会発表] 農業からの労働力供給と賃金の地域性2018

    • 著者名/発表者名
      曲木若葉
    • 学会等名
      農業問題研究学会2018年度秋季大会
  • [学会発表] 分科会「地域水田農業構造変動下における飼料用米と担い手」第2報告2018

    • 著者名/発表者名
      曲木若葉
    • 学会等名
      農業問題研究学会2018年度秋季大会
  • [学会発表] 過疎地域における臨時農業労働力確保の取組と課題---愛媛県みかん産地を事例に2018

    • 著者名/発表者名
      曲木若葉
    • 学会等名
      日本農業経済学会
  • [図書] 佐藤奨平編著『和菓子企業の原料調達と地域回帰』第4、5章2019

    • 著者名/発表者名
      曲木若葉
    • 総ページ数
      36頁
    • 出版者
      筑波書房
    • ISBN
      978-4-8119-0547-1

URL: 

公開日: 2019-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi