研究課題/領域番号 |
18K05862
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
波夛野 豪 三重大学, 生物資源学研究科, 招へい教員 (30249370)
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研究分担者 |
唐崎 卓也 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 本部, 上級研究員 (10370529) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | CSA / シェア / コミュニティ / 産消提携 |
研究実績の概要 |
本研究の具体的課題は、1) 有機農業・有機農産物普及の阻害要因、2) 日中韓のCSAの展開プロセスの比較によるアジア的受容の可能性3)CSAと地域との関わりである。二年目にあたる当年度は2)を中心に中国での事例調査を行い、現地の研究者・実践者との議論を深め、中国CSA全国大会(中国社会生態農業CSA大会)での報告を、研究代表者の指導する社会人院生との連名で行った。中国では、2010年から前掲の全国大会が開催されており、事前調査によって、一昨年段階でのCSA数を約80と補足していた。当年は急速な伸びを予測していたが、2019年度においても実践数において変化がないということが確認された。 中国のCSAは、当初から米国式を導入したものであるが、現在は、消費者への分配(生産への関与)方法として、収穫物シェア、農地シェアを併用し、会員のニーズを満たしている。本研究ではもっとも古くから活動している事例の実践者であり、全国CSA連盟の代表でもある農家の現地調査と情報収集により、有機農産物の取引の実態と生産者及び消費者の関係性、CSAに取り組む農家(実践者)と地域との関わりについてそれぞれの実態を明らかにした。中国においては、CSAは都市消費者のニーズに適合するシステムとしてだけでなく、大学入学時にいったん農民身分から離れた新規就農希望者の受け皿としての役割を期待されていることが明らかとなった。 当年度で得られた中国におけるCSAについての調査結果は、次(最終)年度の調査で得られるであろうそれらとの比較によって、アジアにおけるCSAモデルの受容プロセスを明らかにする基礎となるものである。 CSAと地域との関わりについては、神奈川のなないろ畑農場と兵庫のビオ・クリエーターズを対象とする調査を継続し、CSAの有する重要なコンセプトであるCommunity形成の視点から明らかにする考察を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の具体的課題は、1) 有機農業・有機農産物普及の阻害要因、2) 日中韓のCSAの展開プロセスの比較によるアジア的受容の可能性3)CSAと地域との関わり、である。1)については、オリパラに向けた短期的な情勢変化によって、普及の阻害要因が一時的に変化していることが考えられるため、データ収集と考察が滞っているが、2)、3)については、研究代表者の身体的不調と台湾との連絡不足により、一時遅延が懸念されたが、当該年度の調査対象を次年度対象であった中国に変更し、社会人院生の単独調査を行うことによってそれに代わる事例調査を進めることができ一定の結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
CSAは、有機農業を媒介として生産者と消費者をつなぐ方法であり、アジアにも普及しつつあることが確認できた。また、そこでは、単なる生産者と消費者の協働モデルとしてだけでなく、農福連携、所得格差解消に向けた取り組みとしても、多様な展開を示しつつある。このことは日本での調査で確認されており、韓国、中国、台湾での実態比較が期待される。 一方で、その源流とされる日本のTEIKEI(産消提携)は、1970年代から活動を継続してきた有力な団体が立て続けに解散の検討に入るなど、国内での活動は縮小傾向にある。この産消提携のみならず、日本の有機農業・有機農産物流通はOECD中最低レベルにあり、その阻害要因の探索は、欧米や、アジアの関係者との情報交換においても、関心の高いところである。 これは本研究の主要課題であるが、前年度、当年度にわたる研究によって、従来指摘されてきた相対所得や価格差などの経済的要因だけでなく、生産・消費行動に対する社会的な制約がその背景としてより強く想定されるようになってきた。日本でのオーガニックの停滞要因を、欧米の市民社会を背景とするCSAおよび、中国・韓国・台湾での急速な展開を見せるCSAとの比較を通じて分析するという本研究の課題をさらに進めていくことは有用である。特に台湾は、中国・韓国よりも多くのCSAが活動しているという情報があり、コロナウイルスの影響で現地調査の実行が懸念されるが、現地調査以外の方法によっても情報を獲得することを模索中である。
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