研究課題/領域番号 |
18K05865
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
石田 章 神戸大学, 農学研究科, 教授 (50346376)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高齢者 / 栄養バランス / 食育 / 家族構成 / 共食 |
研究実績の概要 |
我が国における高齢者の栄養バランスの特徴を解明すべく、内閣府・農林水産省「食育に関する意識調査」の個票データのうち,必要なデータが得られた7年分(2009年,2011年,2012年,2014から17年)・全国の20歳以上の成人13,851人のデータを用いて定量分析を行った。具体的には,主食(ごはん、パン、麺など)・主菜(肉・魚・卵・大豆製品などを使ったメインの料理)・副菜(野菜・きのこ・いも・海藻などを使った小鉢・小皿の料理)を3つそろえて食べることが「ほぼ毎日」である予測確率を順序ロジットモデルを用いて推計した。その結果,予測確率は,1)男女全体では,20歳代の42.6%から70歳代では74.3%と高くなるが,80歳代では71.5%に若干低下すること,2)男女別に比較すると,男性では70歳代で73.0%と最も高く80歳では64.0%に急落する一方で,女性では80歳代が79.0%と最も高いなど,とくに後期高齢者の男女間で大きな差が認められること,3)性別に関係なく家族と同居・共食している高齢者がほぼ80%と最も高い水準にあること,4)女性の場合,単身あるいは家族と同居していても共食していない70歳代の高齢者では60%台と低いものの,80歳代では家族と同居・共食している者と差が認められないこと,5)これに対して,男性の場合には,単身および家族と同居していても共食していない高齢者では,家族と同居・共食している高齢者と比べて明らかに低水準にあること,6)関東を除く東日本が他地域よりも若干高水準にあること,7)東日本では都市部よりも農村部の方が高く,西日本では反対に農村部よりも都市部の方が高い可能性があること,などを指摘した。 また国際比較を目的として,中国都市部の調査データを用いて分析した結果,社会経済水準や他要因の影響を除去しても,加齢に伴い肥満傾向が認められることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型肺炎の流行の影響もあって,高齢者に対するアンケート調査を中断せざるをえなくなった。しかし,さまざまな調査の個票データを用いた分析を行い,Web of Scienceの収録雑誌(WOS雑誌)に2報の論文を発表できたこと,WOS雑誌に1報の論文を投稿(審査中)できたことから,研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度後半から,自治会等を通じて実施しているアンケート調査を継続的に実施し,そのデータを用いた分析を実施する。さらに,政府が実施している調査(国民健康栄養調査など)の個票データを用いた定量分析も実施する。そのことによって,高齢者の食意識・食行動・食事満足度に関する地域間比較を進めて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型肺炎の影響で,2019年度末に予定していたアンケート調査の実施を2020年度に延期せざるをえなかった。また,19年度末に下書きの完成を目指していた英語論文(2本)の作成が若干遅れたため(現時点では20年5月に下書き完成予定),これらの英文校閲料および投稿料等の諸費用を支出しなかった。このため,約108万円の繰越金が発生した。20年度には,研究費は20年度分の60万円を加えた約168万円となるが,アンケート調査費に65万円,厚生労働省等からの個票データ入手にかかる費用に5万円,PCの新規購入に20万円,調査旅費および学会報告のための旅費に30万円,英文校閲料に24万円,論文投稿料・掲載料に20万円,データ分析補助にかかる人件費に4万円を支出する予定である。
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