連合総合生活開発研究所が毎年実施している「勤労者の仕事と暮らしについてのアンケート」のローデータ(2018年から2023年,分析対象は必要なすべてのデータが得られた21840人)を用いて,消費者(勤労者)の生活費切り詰め行動について分析を行った。カテゴリカル・パス解析の結果,物価は上昇基調にある一方で世帯所得は減少したと回答した消費者,世帯収入の水準が低い消費者ほど,暮らし向きが悪化したと感じており,分析対象とした12の支出項目すべて(外食費,家庭内での食料品費,嗜好品代,衣料費,理容代,医療費,耐久消費財費,レジャー代,光熱費,交通費,住宅関連費,保険代)において消費の切り詰めを行っていることが明らかとなった。また,物価上昇が顕著であった2023年の影響については,消費者は2022年と比較して2023年に物価は大きく上昇したものの1年後には物価が低下すると予想する傾向にあったが,総合的には2023年の物価上昇が消費切り詰め行動を助長したことが明らかとなった。とくに60歳代に着目すると,1)自らの世帯収入は減少基調にある一方で,物価は上昇基調にあり,暮らし向きが悪化傾向にあると感じていること,2)この結果,家庭内で消費する食料品,嗜好品,医療サービス,耐久消費財,レジャー関連,交通,住宅関連への支出を切り詰める一方で,外食,衣料,理容サービス,光熱費,保険サービスへの支出に関しては切り詰めていないことが明らかとなった。
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