研究課題/領域番号 |
18K05867
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
横溝 功 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (00174863)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 畜産クラスター協議会 / 中心的な経営体 / 施設整備 / 機械導入 / 実証支援 / 全国推進 |
研究実績の概要 |
畜産クラスター協議会のガバナンスと展開を明らかにするために、まず、畜産クラスター事業の制度を整序した。畜産クラスター事業(畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業)は、2014年度に誕生した。当該事業創設の背景には、畜産・酪農部門において、農家戸数や飼養頭数の減少など生産基盤の弱体化が懸念されたことがある。 畜産クラスター事業は、4つの事業からなる。「施設整備」と「機械導入」が、「中心的な経営体」によるハード面の投資を助成する事業である。当該事業では、半額の補助が可能になっている。「実証支援」は、協議会によるソフト面での取組に対して助成する事業である。「全国推進」は、中央畜産会によるソフト面での取組に対して支援する事業である。 2015年度から2018年度の補正予算では、4つの事業一括で、毎年600億円前後の予算が計上されている。ソフト面での助成や支援が1億円程度であるので、ほとんどが、ハード面の「施設整備」と「機械導入」ということになる。ハード事業は半額補助であるので、中心的な経営体が、4年間にわたって、毎年1,200億円前後の投資を行っていることになる。 畜産の農業産出額が、近年3兆円であるので、農業産出額の約4%の投資を行っていることになる。補助を除くと自己負担分600億円は、農業産出額の約2%になる。 以上のような畜産クラスター事業の制度を整序した上で、「鳥取県東部地域畜産クラスター協議会」の実態調査を行い、中心的な経営体であるステークホルダーの現状と課題をヒアリングした。東部コントラクターによる畜産農家と耕種農家の仲介機能によって、耕種農家の場合、食用米生産に比べて、稲WCS生産の労働生産性が、3.16倍になることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
畜産クラスター事業の制度面の整理は、順調に進めることができた。また、畜産クラスター事業誕生の背景を明確にすることもできた。 畜産クラスター事業の実態調査では、「鳥取県東部地域畜産クラスター協議会」を対象に行うことができ、耕種農家の場合、食用米生産に比べて、稲WCS生産の労働生産性が、3.16倍になることが明らかになった。しかし、畜産クラスター協議会のガバナンスに関しては、今後、キーパーソンの役割を明確にするという作業が残されている。さらなる調査が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
「鳥取県東部地域畜産クラスター協議会」を対象に、キーパーソンの役割として、多様なステークホルダー間の利害調整の仕組みを解明する。 つぎに、キーパーソンと各ステークホルダー間の情報の交流を明らかにする。両者は、会社組織のようなライン関係ではなく、双方向のフラットな関係にある。その中で、協議会の目標達成に向けて、どのようなモチベーションやインセンティブを、各ステークホルダーに与えているかを明らかにする。 さらに、畜産クラスター協議会の持続性に、どのような工夫がなされているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
畜産クラスター事業の調査が1事例に留まり、次年度使用額が生じた。これは、畜産クラスター事業の制度的な整序に、多くの時間を割いたためである。これによって、畜産クラスター事業誕生の歴史的な背景を知ることができ、事業の意義も把握することができた。この知見を基に、次年度は、畜産クラスター協議会の調査件数を増やしていきたいと考えている。
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