有機農業や自然農法などの「自然共生型農業」が地域に広がり、地方自治体の政策に取り入れられる事例が増えている。中には野生生物との共生や学校給食を通した食農教育の実施など、従来の農業政策の枠を超えた事例もある。自然共生型農業の地域展開を説明するには、付加価値などの経済的要因だけでは十分ではなく、自然共生型農業独自の機能や価値転換に注目する必要がある。そこで本研究では「自然共生型農業の地域展開は機能的・倫理的要因によって規定される」という仮説を立て、それを検証するために全国の事例を網羅的に収集・類型化し、そのなかの重要な数事例を選んで、展開過程を「機能の系」と「価値転換の系」で分析する。それによって、自然共生型農業の展開過程において、農業の多面的機能の発揮と人々の価値転換が起こっていることを実証的に明らかにしようとする。 5年目の調査:①山形県高畠町、岐阜県白川町、大分県臼杵市の補足調査を実査またはオンラインで実施した。②分担研究者や研究協力者の協力を得て、研究成果を単行本『有機農業はこうして広がった:人から地域へ、地域から自治体へ』としてコモンズから出版した。③農林水産省がみどりの食料システム戦略を策定し、有機農業の大幅拡大という目標を掲げたことに対して、本研究成果を踏まえて単行本(共編著)1本、単行本(編著)1本、学会報告1回、雑誌論文4本、新聞論説6本、講演7回などの成果があった。
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