最終年度は、コロナ以降の集落悉皆フィールド調査の実施困難と個人的事情(親の介護)のために、農地制度に関する文献研究に留まり、具体的な成果は出せなかった。 研究期間全体としては、農業団体、県段階の農地中間管理機構、自治体、大規模農業法人などへのヒアリング調査によって、農地利用調整の実態と変化の方向・程度についての現状把握を行うとともに、実施不可能となった農家へのフィールド調査とアンケート調査の代替措置として、滋賀県での農業委員・農地利用最適化推進委員へのアンケート調査を行った。 以上を通じて判明したことは、次の通りである。①農家の代替わり・土地もち非農家化が予想以上に進行しており、家産的・むら的農地意識は著しく後退してきている。②その傾向は、土地もち非農家と若い世代に著しい。③家産的・むら的農地意識の後退は、地所有者の農地への執着を薄れさせ、農地中間管理事業の白紙委任的農地管理が進めやすい状態になっている。④他面で、農地集約(団地化)のために必須である地域における農地管理体制が弱体化がすすんでいおり、農地集約のみならず集団転作などにも悪影響が出てきている。家産的・むら的農地意識の後退は、一面では白紙委任化を容易にするが、他面では集約化を実現する地域力を低下させるなど、正負両面の効果をもたらしている。⑤農地利用に関する地域計画の策定に対する地域の取り組み状況については、A担い手確保が困難で計画策定が難しい中山間地域、B地域計画策定は容易だが組織内部の担い手に不安を抱える集落営農展開地域、C集落を越えた出入作が一般化し農地の集約が大きな課題になっている個別差規模農業者展開地域に、分類できる。 残念ながら、農家へのアンケートが実施できなかったことにより、農地意識とソーシャルキャピタルの関係性を明らかにすることはできなかった。
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