研究課題/領域番号 |
18K05873
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
笹原 和哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, グループ長 (70355668)
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研究分担者 |
安江 紘幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 主任研究員 (40508248)
冠 秀昭 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上級研究員 (70502235)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水稲直播 / 生産費 / 作業時間 / カリフォルニア / 日本 |
研究実績の概要 |
本研究は低コスト化された欧米(イタリア、アメリカ)稲作技術の中から、両国と同様な資本装備を可能とする日本国内の大規模水田作経営において、導入が有望な技術の把握を目的として、次の3課題からなる。課題1.有望な欧米新技術とその生産費用、課題2.欧米新技術を導入する要件と心理的抵抗、課題3.コメの輸出入状況の把握と進捗可能性。 課題1:カリフォルニア州では直播適性の高い短稈品種の表面散播湛水直播を基本とする。大型トラクタ、作業機を使用した播種床造成、航空機による播種、地上からの除草剤散布、普通コンバインによる収穫、冬期湛水による稲わら分解促進、等の方式で栽培されていた。重粘土の土壌条件に合致した栽培体系であった。我が国においても上記品種の導入を優先すべきと考えられた。一部水田輪作は傾斜地圃場を用いる。費用合計レベルの生産費は約30円/kgであった。除草剤散布、肥料散布を飛行機による外部委託をするかは経営による。種苗費2200円/10a、肥料費2900円/10a、農業薬剤費8700円/10a。雑草イネ対策は事例は不要だった。対照とする国内事例は乾田ドリル播種にて業務用米を生産し、100haを超える。生産費は費用合計で117円/kgであった。種苗費2,000円/10a、肥料費8,083円/10a、農業薬剤費6,426円/10aと、資材では肥料費のみ差が見られた。 2:心理的抵抗測定対象に短桿品種、普通コンバイン、散播直播、傾斜地圃場が候補となることを明らかにした。 3:国内からの輸出の可能性を検討した。カリフォルニアでも生産者が食味を重視して生産する場合、500円/kg等で販売される。コメの食味官能試験を「あきたこまち」を基準米として、A:「萌えみのり」B:「ミルキークイーン」を用いて米国人24名に対して実施した。日本と同様に「総合」得点と「味」の相関が高いことを解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定しているアメリカカリフォルニア州、アメリカアーカンソー州、イタリアピエモンテ州の海外調査のうち、カリフォルニアを調査した。特に有望な欧米新技術の摘出については、生産を制約する重粘土と温暖な気候、平坦な地形、水の確保を背景に、それに対応した冬期湛水による稲わら分解促進、チゼル耕2回とディスク耕1回、Triplaneなどで均す作業機を4回使用した播種床造成、出穂時まで湛水を続けること、一部傾斜地をレビーを用いた水田輪作圃場とすること、といった技術構造を持っていることが調査結果から示された。また、対照となる国内経営への調査が進んでいる。これらをもって順調な進展と自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
課題1について、次年度は規模や労賃単価が日本に近いイタリア現地の実態を調査し、再来年にカリフォルニアよりも競争力のあるといわれるアーカンソー州の稲作技術と経営の調査を行う予定。課題2については、次年度7月に、短桿品種、普通型コンバイン、散播直播、傾斜地圃場の造成等に対して、国内の経営者が取り組む意欲の生じる技術はどれかを把握するため、アンケートから順位付けを行う。課題3については、FOB価格に加えて必要な米輸出時の横浜港等の倉庫費用を関係機関への聴取調査から把握して、実際の取引に近い費用構成を再現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は渡航費用の予想と実際の差から生じている。次年度使用額とした金額は、2019年度の渡航費用に充てることとする。
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