軟弱地盤の改良に関する施工および研究事例は古くから国内外に多々あり、原位置での地盤改良においては、石灰またはセメントを主体とした改良材が一般的に使用されている。しかし、適正な改良材の配合量や複数の改良材の配合による施工に関してはほとんど検討されていない問題がある。前年度の研究成果から、ステンレス製鋼スラグとJISフライアッシュを等量混合したフィラー材料によるジオポリマーが力学的に優れていることが明らかになっている。この結果を踏まえ、適切な地盤改良材として、スラグとJISフライアッシュを等量混合した場合に相当する化学組成を有するPFBCフライアッシュについて検討した。 産業廃棄物としてのフライアッシュを使用した地盤改良材に関する研究事例は少なく、特に石炭火力発電所の加圧流動床複合発電方式のボイラーから排出されるPFBCフライアッシュ(PFBC灰)の地盤改良材としての研究事例は皆無のようである。当該年度は、PFBC灰を併用した浚渫粘土の段階的な地盤改良に関して検討を行った。比較の対象として、生石灰および普通ポルトランドセメントを使用した。その結果、PFBCフライアッシュは石灰とセメントの中間的な性質を有する材料であると推定された。このため、今回の実験に使用した高含水比の浚渫粘土の改良においては、最初に石灰を添加して短時間で含水比を減じた後に、セメントを添加して長期的な硬化の増進を図るための2段階施工による地盤改良が有効であると考えられた。また、この2段階施工による地盤改良は、一軸圧縮強さだけでなくスレーキング抵抗性にも有効であることが明らかとなった。一方、PFBCフライアッシュを単独で地盤改良材として使用した場合においては、石灰やセメントと比較して力学的に劣る欠点はあるが、長期的なスレーキング抵抗性向上には有用であることが明らかとなった。
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