研究課題/領域番号 |
18K05886
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
多炭 雅博 宮崎大学, 農学部, 教授 (20444888)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リモートセンシング / 灌漑計画 / 農業水資源 / 蒸発散 |
研究実績の概要 |
本研究は、近い将来身近になるビッグデータとしての蒸発散量データを、世界各地域の農業水資源計画や水資源管理の実利用面で有効に利用する技術の開発を目指すものである。具体的には衛星リモートセンシング技術を利用して面的に求めた実蒸発散量データと蒸発散需要量データを組み合わせ、灌漑適正度をその空間分布とともに評価する手法の開発を目指している。 研究3年目の令和2年度は、GCOM-C衛星画像およびMODIS衛星画像を利用したビッグデータ利用による広域植生状況把握及び蒸発散推定技術の開発研究を継続し、灌漑適正度への利用可能性の検討解析を進めた。特にこれまで衛星による蒸発散量推定の際に問題となっていた精度検証作業の難しさについて、気象データによる基準蒸発散量と作物作付状況データによる作物係数を使った基準作物蒸発散量(ETc)との比較による簡易精度検証法について、文献調査及びデータ解析の両面から有用性の検討を進めた。 また、昨年より開始した合成開口レーダー(SAR)衛星画像を利用した水稲生育モニタリング技術研究の畑地モニタリングへの適応実験を行った。この研究成果は日本雨水資源化システム学会大会において発表した。 衛星蒸発散量を使った灌漑適正度の空間分布モニタリング手法の現場普及活動としては、昨年度論文としてまとめたイラン国オルミエ湖流域における流域蒸発散推定の研究成果がFAOに注目され、この成果を現場適用の面からまとめなおす形で、次年度開催予定のFAO主催のウェブセミナー(リモートセンシングによる蒸発散量推定)において事例紹介を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予算上の制約により、本研究のプロポーザル段階で計画していた海外調査は行えなかった。また、海外調査に代える形で行っていた国内現地調査もCOVID-19により大きな制約を受けたものの、現地調査に割り振る予定だったリソースをデータ解析業務に割り当てている。2019年度は国際誌3本、国内誌1本、合計4本の学術論文を出版し、当初計画以上の進展を得ていた。2020年度はこれらの出版済データおよび結果をより深く解析するとともに、研究最終年度である来年度に向けての成果とりまとめ準備を行っている。 社会が急速にオンライン化したため、研究計画当初は想定していなかった、オンラインによる海外専門家とのミーティングもかなり容易になり、海外専門家との連携もある程度確保したうえでの研究推進も行えている。これらのことから、研究が当初計画と照らして順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度の4年目にあたる令和3年度は、概ね当初計画通りに研究を行う予定。GCOM-C衛星が打ち上げ後3年を超え、地表面観測データの蓄積も進んできたので、データ解析を通してデータ利用法を提案していくとともに、これまでの研究成果のまとめと成果発表を重点的に行う予定にしている。具体的には、本研究で得た成果をFAOのウェブセミナーで発表し、現場への普及を推進するとともに、国際会議での発表も予定している。 これらの研究活動により、本研究の目的である「人工衛星観測技術を活用した次世代灌漑評価手法開発」を、当初計画より高い次元で達成することを目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は年度当初より新型コロナの全国的な蔓延により、大幅に予算執行計画の修正が必要になったものの、必要性が高まったデータ解析装置やウェブ会議関連消耗品に、研究発表会のオンライン化で不要となった旅費を充てる等により、少額の次年度使用額が生じているが概ね研究遂行のために計画的かつ効率的に予算執行ができている。本研究に寄与する国際連携維持のためのウェブ会議システムの消耗品がまだ一部不足しているので、次年度開始直後に次年度使用額を充てる予定。
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