研究課題/領域番号 |
18K05889
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
北辻 政文 宮城大学, 食産業学群, 教授 (30195268)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 石灰石骨材 / カルシウムイオン / 溶脱 / 流速 / コンクリート水利施設 |
研究実績の概要 |
東北地方の石灰石粗骨材を用いたコンクリート水利施設では,選択的に粗骨材がくぼむ溶脱が起きている。メカニズム解明のため,現地調査,骨材試験および流速を違えた環境下でコンクリート供試体の粗骨材溶脱再現試験を行った。 東北地方現地調査では,石灰石粗骨材を用いたプレキャストコンクリート製品水路,現場打ちコンクリート水路およびコンクリートダムで溶脱が確認された。北海道の調査においても同様な現象が確認された。 骨材試験では石灰石粗骨材のすり減り値は,JIS規格内であるが安山岩に劣ることが分かった。 溶脱再現試験から石灰石粗骨材の溶脱深さは,経過日数に伴い直線的に増加し,流速が大きいほど顕著であり,流速がV=1m/s程度の場合,粗骨材の溶脱深さは0.7mm/年と予想された。 なお本研究の成果は,農業農村工学会論文集へ「東北地方におけるコンクリート水利施設からの石灰石粗骨材の溶脱に関する基礎的研究」と題して投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
室内における実験は予定通り良好に行われた。しかし現場調査は、東北地方に限らず全国を対象としたが,新型コロナの影響により出張することが難しく、北海道以外の調査ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
石灰石粗骨材の溶脱メカニズムを明らかにするためには,石灰岩の溶解は水の溶解特性が関係し,溶媒および溶質の物質移動過程が存在するとの報告もあり,流速だけにとらわれず,硬度,pH および温度などの水質の検討も必要である。水道分野では,カルシウム腐食性をランゲリア指数で評価している。ランゲリア指数がプラスなら炭酸カルシウムが析出しやすく,マイナスならば腐食性となることが述べられている。. また軟水におけるコンクリートにおける自然水の侵食性評価基準も提唱されている。これら既存の腐食・侵食に関する基準による検討も必要である。 溶脱が発生している用水路において,かんがい期,非かんがい期の水質成分および供用期間中の流速や水位など水理的データを手掛かりに石灰石粗骨材溶脱のメカニズムを解析していく予定である。さらに石灰石粗骨材の溶脱が発生した水路補修技術の開発は急務であり,今後補修工法について検討する予定である。 一方,東北および北海道地域以外の調査が進んでいないことから,その他の地域について調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国の石灰石を用いたコンクリート水路の現地調査を行う予定であったが,新型コロナの影響により,出張することができなかった。次年度に,大分,山口,岐阜,埼玉等の石灰石産出地域の調査を行う予定である。
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