研究実績の概要 |
今年度は、蛍光指紋を用いて食品との接触面、つまりステンレス板上における食品の汚れの蛍光指紋データベースの構築、および定量手法の開発を目的とした。13品目の食品について、蒸留水を加えてホモジナイズし、遠心分離した後、その上清を食品抽出液とした。抽出液は5段階の希釈をした。次に、抽出液をステンレス板上に塗布し、塗布面の蛍光指紋を測定した後、拭き取り試験による ATP 発光量の計測を行った。また抽出物中の固形分含有量も測定した。蛍光指紋のデータから発光量および固形分含有量の予測を行った。ATP発光量のバリデーション群では、決定係数は0.54、RMSEは9,600RLUであった。ATP発光量はバラツキが大きく、特に同じ食品で同じ希釈倍率でも桁数が異なるものがあったことが、推定精度に大きく影響したと感がられる。一方、固形分含有量のバリデーション群では、決定係数は0.43、RMSEは5.4×10-4 g であった。固形分含有量で精度が低かった理由として、緑茶のデータが他の食品よりも2桁大きかったのが影響したと考えられる。 また、蛍光指紋データに主成分分析を適用した結果、第一主成分(寄与率75.3%)、第二主成分(寄与率17.1%)、第三主成分(寄与率3.42%)であった。ローディングプロットから、第一主成分は全体蛍光量、第二主成分はNADHに起因する発光量、さらに第三主成分はトリプトファンの発光量を意味していると考えられた。
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