昨年度までに構築した植物応答評価システムで実験を継続した。培養室にはMIR-554型、計測制御用コンピュータにはZ210型、プログラマブル直流電源にはPMX18-5A型、データ収集装置には34970A型、光源にはG-1641NH型ハロゲンランプを使用した。タイマーで時刻制御されたアクチュエータによって、ブラインド材として用いた半透過型太陽電池モジュールを放射照度に応じて光源と植物の間に出し入れした。このシステムを用いて、キュウリ実生育苗実験を実施した。実生を用いた理由は、子葉の展開角度や胚軸伸長などの光応答が、半透過型太陽電池モジュールの遮光制御の有無によって強く影響を受けることが想定できたこと、一週間程度のサイクルで繰り返し実験が可能であること、ならびに同一条件で多数の個体をサンプルとして統計評価を可能とすること、による。 本ブラインドシステムを配備した温室で0.8 kW m-2に遮光動作の日射閾値を設定した場合、日出から日射閾値に達する時刻t1までは遮光しないため、通常の温室と同じように日射が温室内に入る。t1から午後に再び日射閾値に戻るt2までブラインドによる一定の遮光率を維持する。温室作物の光飽和点は光合成有効光量子束密度(PPFD)で1000-1500 μmol m-2 s-1程度である。これに対して、真夏の快晴日のPPFDは2000 μmol m-2 s-1を超える。0.8 kW m-2は1440 μmol m-2 s-1のPPFDに相当する。このため、強日射でダメージを受ける、あるいは強光を避ける生理応答をする作目では、動的な遮光制御により収量や品質の向上が期待できると考えた。このような光環境を上述の培養室内に再現して繰り返し実験することにより、植物の応答を評価した。現時点では、キュウリ実生の初期生育に及ぼす遮光の有効性は検出できておらず、実験を継続している。
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