研究課題/領域番号 |
18K05908
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 噴霧器 / ホルモン剤 / ナノミスト / 農業 / 自動化 |
研究実績の概要 |
我々のこれまで,ミストの粒子径が数100nmである噴霧器(ナノミスト噴霧器)を開発し,それを用いて,ビニールハウス内における農薬,液肥,忌避剤の散布に成功してきた。これは,ナモミスチ噴霧器から噴霧されるミストの粒子系が非常に小さいためで,自動で均一に拡散させることが可能であり,農作業の自動化に貢献できる。本年度は,農薬,液肥,忌避剤に加え,植物の果実に有効なホルモン剤の散布が可能か,また,自動化が可能であるかを確認すべく,ビニールハウス内のミニトマトを対象に,ホルモン剤(トマトトーン)の散布実験に取り組んだ。ここでは比較のため,従来手法である霧吹きを用いたホルモン剤散布を行う「慣行区」,ホルモン剤散布を行わない「無処理区」,ナノミスト噴霧器を用いて散布を行う「処理区」の実験を2回行なった。その結果,1回目の実験では,慣行区,無処理区,処理区の平均着果率はそれぞれ,75.0%,16.7%,27.8%であり,2回目の実験ではそれぞれ,91.7%,6.67%,41.7%となった。無処理区においても果実しているが,これは,風や虫により受粉が行われたためである。以上の結果から,慣行区の平均着果率には及ばないものの,ナノミスト噴霧器を用いたホルモン剤散布の効果そのものは確認できた。ただ,現段階では,慣行区の平均着果率よりは及ばないことが明らかであり,その原因は,ナノミスト噴霧器により自動散布を行なったホルモン剤がビニールハウス全体へ拡散し(実験を行なっている区域外へ拡散し),本来付着すべきミニトマトの花房への付着量が不足したためであると思われる。現在は,その改善のため,ナノミスト噴霧器における種々のパラメータを変更し,再実験を行うべく準備しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験は,実際の農産物を取り扱う上,その農産物の苗の準備,苗へのホルモン剤散布からその着果を確認するという,比較的長い時間での実験を行うことが必要となる。さらに,冬の季節は果実(ここではミニトマト)が生育しづらく,実験実施に不向きな季節がある。加えて,本実験に協力いただく協力者が転勤することとなり,実験の継続性にも難があることがわかった。そういうことから本年度は2回の実験にとどまった。しかしながら,ナノミスト噴霧器によるホルモン剤散布が可能であることは明らかとなり,今後以上の問題を改善すべく研究を推進する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,以下の計画に基づき実験を進め,本研究を推進することとしている。 (1)実験担当者の移動に伴う新たな担当者と打ち合わせを行い,今後の実験の実施計画,実施方法についての協議を行う。 (2)ナノミスト噴霧器のパラメータを調整し,トマトトーンの散布に適した機器へと改良に取り組む。 (3)実験結果をまとめ,学会や研究会での発表の準備に取り組む。 (4)流体のシミュレータを用いて,噴霧粒子の拡散の様子を調べる。 以上をとおして,ナノミスト噴霧器によるホルモン剤散布の有効性を明らかとする。また同時に,ナノミスト噴霧器を用いたミストの拡散の様子を確認するため,シミュレーションを用いることができないか検討する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由に関しては,(1)本年度のホルモン剤噴霧実験に関しては,現在所有している噴霧器を用いて実験を行ったため,(2)現段階においては,ホルモン剤噴霧の効果そのものは確認できるものの,人手による作業と比較した場合にはその水準には達していないことから国際学会での発表を控えたため,(3)データ採取のためのラップトップPCに関しては,現段階ではデータ量がそれほど多くないため,購入を次年度以降に変更したため,である。なお,次年度の使用計画としては,新たにナノミスト噴霧器を3台程度作成するとともに,効率良く実験を行うために,噴霧粒子の拡散の様子を確認するためのシミュレータを購入する予定であり,さらに,噴霧の様子を可視化するための実験にも取り組む。これらのハードウェア,ソフトウェアおよび実験のための物品を購入するための支出に充てる予定である。
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