研究課題/領域番号 |
18K05908
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
淡野 公一 宮崎大学, 工学部, 教授 (50260740)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 噴霧器 / 薬剤散布 / 農業 / 自動化 |
研究実績の概要 |
今年度は,実験そのものの効率化を目的に,これまで使用してきた噴霧器の改良に取り組んだ。変更箇所としては,噴霧強度,噴霧出力量,噴霧時間をユーザーが設定できるように改良した。噴霧強度および噴霧出力量に関しては,それぞれ3段階で調整可能となり,噴霧時間に関しては2時間,4時間,8時間,12時間の連続噴霧の設定が可能であり,毎日同じ時刻から,設定した時間だけ噴霧を行うことが可能となった。最大噴霧の設定とした場合,1時間で約3.21mlの噴霧が可能であり,この噴霧量は,従来器と比較して約6倍の値となる。次に,この改良したナノミスト噴霧器の噴霧の様子を確認するため,90cm四方の矩形容器内に散乱粒子を混入し,レーザーシートを用いて噴霧の様子の可視化にと取組み,確かに噴霧していることを確認した。最後に,この改良したナノミスト噴霧器を用いた農薬散布実験に取り組んだ。ビニールハウス内に,白菜,かぶ,ほうれん草を植え,これらの農作物に青虫を付着させ,農薬散布を行った。散布した農薬は,マラソン乳剤であり,希釈倍率を2,000倍,1,000倍,500倍,原液と変化させ,かつ,噴霧時間を6時間,4時間,2時間と変化させることでその効果を確認した。その結果,残念ながら,期待されるような殺虫効果を得ることはできなかったが,農薬散布を行っていない農作物と比較した時,散布した農作物に関しては,明らかに虫食いによるダメージが少ないことが確認できた。以上から,ビニールハウス内の温度や湿度の影響により,マラソン乳剤の拡散が十分に行われなかったためであると思われる。次年度は,この点に着目した実験に取り組む計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験では,実際の農作物を取り扱い,その苗等の準備から作物の成長までの過程を,ナノミスト噴霧器による薬剤散布を行いながら,チェックするという比較的長いスパンでの実験を数回行うことが必要となる。この実験を行うには,農業従事者や実際の農業に関する知識を有する方の協力が必須である。昨年は,宮崎県立農業大学校の先生の協力を得て実験を実施していたが,ご担当いただいていた先生の異動により,実験そのものの継続が不可能となった。そこで,提案するナノミスト噴霧器による噴霧実験にご協力いただける方(実験協力者)を新たに探す必要が生じた。その結果,実験協力者を得ることができ,今回報告する実験を実施するに至った。そのため,本来考えていた進捗よりも若干遅れてしまった。次年度に関しては,今回協力いただいた実験協力者が継続して実験を担当することとなっており,問題なく実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,今年行った研究結果の課題に基づき,ビニールハウス内の温度および湿度変化に伴う薬剤散布の関係を確認する。そこで,以下の研究に取り組む。 (1)ビニールハウス内の温度,湿度自動計測システムを設置し,この中において薬剤散布の実験に取り組む。 また,これまでの研究成果に基づき, (2)国際学会での発表準備に取り組む。 また,前年度の計画で記載していたシミュレーションによる拡散の様子の可視化に関しては,予算的に難しいことが分かったため,本年度内に他の方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由に関しては,(1) 現段階においては,国際学会で発表する研究成果に達していないとの判断から,発表そのものを控えたため,(2) データ取得のためのラップトップPCに関しては,現在研究室で使用しているラップトップPCを用いているめ(次年度購入予定),である。次年度では,ビニールハウス内の温度,湿度の自動計測システムを設置する他,それに伴うコントローラなどが必要となり,さらに,実験を効率よく行うために,新たなナノミスト噴霧器を購入する計画である。さらに,噴霧の様子を可視化するための実験に関しても継続的に取り組む。それらの物品を購入のための予算に充てる予定である。
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