本年度は,レーザースキャナとカメラが搭載された小型で軽量なモバイルマッピングシステム(以下,MMS)により取得した高解像度画像から,熟練技術者の判別ノウハウを深層学習に組み込むことにより,広葉樹の高精度な樹種判別手法の開発を目的として研究を進めた.まず技術者が樹種を判別する際に,一般に葉や樹皮の詳細形状を手掛かりとすることから,本手法でもこれらを評価指標とした.MMSでは1本の樹木を異なる位置と姿勢から撮影した複数枚の画像が取得できるため,これらの画像中の葉や樹皮を含む小領域画像を複数抽出し,それぞれを深層学習にて樹種判別し,その結果の投票により最終的な判別を行う手法とした.7種の樹木を対象とした様々な実験より,1枚の画像のみでは80%程度の判別率しか得られないが,10枚程度まで増やすと判別率が95%程度まで向上することを確認した.これに加え,各小領域画像に対し,樹種判別に加え,専門技術者の目線で樹種の判別しやすさをスコアとして定量評価するマルチタスクCNNを新たに提案した.投票による判別の中で,各画像の判別しやすさを利用した重みづけ投票を行うことで,スコアが高く判別しやすい画像を優先的に評価でき,より高精度な判別率が期待できると考えた.そのため複数の技術者に依頼し,7種各100枚ずつの画像を用意し,各画像に対して判別しやすさを表すスコア付けを行った.このスコアをマルチタスクCNNにより,樹種判別と同時に推定可能であるか検討を行った.また得られたスコアを用いた重みづけ投票による判別率向上効果を検証した.
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