研究課題/領域番号 |
18K05914
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
官 森林 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 研究員 (30554092)
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研究分担者 |
鹿内 健志 琉球大学, 農学部, 准教授 (20264476)
深見 公一郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 九州沖縄農業研究センター, 上級研究員 (50399424)
名嘉村 盛和 琉球大学, 工学部, 教授 (80237437)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハイブリッドペトリネット / 作物生育モデル / 生育指標 / ドローン / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
「ハイブリッドペトリネットを用いた作物生育モデリング」は稲・麦・サトウキビを対象作物としている。2018年度は、ハイブリッドペトリネットを用いて稲に対する基本生育モデルを作成し、草丈・茎数・葉数などの必要な生育指標は過去の経験データおよび2018年春からの計測データを利用した。 2018年冬作の小麦・大麦では、上記の生育指標データに加えて地温・水分などの環境影響要素データを測定し、九州沖縄農業研究センターの試験圃場と福岡県の生産者圃場においては、1週間間隔でドローンによるリモートセンシング試験を行った。2019冬作では、1週間間隔で小麦・大麦の地上部サンプリングを行い、株個体の画像、草丈、茎数などの経時データを測定・蓄積し、2020年5月末まで継続した。これらの全生育期間データを利用した小麦・大麦の生育モデルのシミュレーション計算と検証は概ね完了した。 サトウキビに対する生育調査は、九州沖縄農業研究センターの糸満拠点および現地圃場で行い、可視光カメラとマルチスペクトルカメラが搭載されたドローンを用いて適時の空撮データを取得した。また、農研機構の農業技術革新工学研究センターから支援を受け、高精度RTK-GNSS (Trimble SPS855)とトータルステーションの比較試験を実施し、空撮画像からサトウキビ草丈を推定することができた。 関連成果は「空中写真から作成したサトウキビ圃場の三次元モデルによる生育解析」、「ドローン空撮画像を利用したリモートセンシングに及ぼす雑草の影響」、「ドローン空撮画像によるサトウキビの生育診断」および「ドローンリモートセンシングにおけるRTK-GNSS高精度測位とその活用」を含め学会で発表し、さらに改良した成果は英文誌ジャーナル原稿へまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハイブリッドペトリネットを用いた作物基本生育モデルの構築には、各対象作物(稲・麦・サトウキビ)の日常の定期的な生育データを計測・蓄積する必要があり、特に人的制御不能な不安定的外乱要素(天候・自然災害・病虫害)をデータ化することは想定より困難があった。作物の生育期間に依存するデータ収集と蓄積は大変時間がかかったため、AIとの融合まで進められなかった。このため2018年始から準備してきた特許出願は現時点では不備があり、AIとの融合ができた時点で新しい知見を見出す可能性について再考する。 各対象作物の日常の定期的な生育データを計測・蓄積することは、2018年春から稲・サトウキビ、同年冬からは麦に関する生育データ(草丈・茎数・葉数・植生指数など)と環境影響要素データ(積算温度・地温・水分)について2年作期続けた。特にリモートセンシングについては、マルチスペクトルカメラ(Parrot Sequoia)が搭載された軽量型ドローンを用いて対象圃場(九州沖縄農業研究センター試験圃場および福岡県・佐賀県・沖縄県の現地圃場)において1週間間隔で空撮を行い、4テラバイト以上の画像データを蓄積し、ハイブリッドペトリネットとAIを利用した作物生育モデリングに関するデータ基盤を整備できた。 また、分担研究者らと打ち合わせ、特に麦の生育プロセスや生育指標の時系列変化などに対し、モデルの設計に必要な理論と方法を確立した。これにより、生育プロセスをシミュレーションでき、任意時点の生育指標を推定することが可能となり、全生育期間データを利用した小麦・大麦の生育モデルのシミュレーション計算と検証を完了した。 以上によりモデル構築の理論と方法設計は概ね順調であったが、それに必要なデータ収集・蓄積に時間がかかったため、モデルの検証とAIとの融合はR2年度へ順延し、研究課題全体は予定よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
ハイブリッドペトリネットによる麦の基本生育モデルを設計し構築できたため、2019年および2020年5月収穫の麦に対する全生育期間データを利用しシミュレーション計算を行い、その結果を早期にオープン国際誌ジャーナルへ投稿する。また、構築したモデルとAIとの融合することにより新しい知見を見出せれば特許出願を行う予定。 対象作物の稲・麦・大豆・サトウキビに対する生育データの計測は、2020年も続けて行う。草丈・茎数・葉数の調査は適時に行い、マルチスペクトルカメラが搭載された軽量型ドローンを用いたリモートセンシングは生育期間を通し、1週間間隔で実施する。特に高精度のRTK-GNSSドローンを用いた高精度の植生指数(NDVI)を計測し、モデルのシミュレーションと実証へ適用する。 また、構築した作物生育成長モデルから圃場単位の作物全体生育モデルへ拡張し、そのモデリング方法の開発とシミュレーション計算を行う。その結果を作物の実際の生育データと比較し、モデルの改良やモデリングの精度向上を工夫する。また、AIと融合し、圃場単位の作物全体生育モデルに基づき、作物生育状況の自動シミュレーションと予測プログラムを実装する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文作成の進捗により学会発表と英文校正は次年度へ変更し、当初計画した購入機材・旅費などは必要最小限にし予算利用の節約に努力したためである。 次年度使用額は学会発表と英文校正に関する料金と、IoTセンサーやドローンセンシングに関する資材購入に利用する。
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