研究実績の概要 |
最終年度ということもあり、これまで得られたデータの解析および論文執筆を中心に研究を実施した。 テンサイ一代雑種(F1)と親系統の個葉における気孔コンダクタンス、蒸散速度および 純光合成速度を調査した。その結果、気孔コンダクタンスおよび蒸散速度には有意な系統間差が認められた。またテンサイの気孔コンダクタンスおよび蒸散速度は、収量形質である根重および糖量に有意な相関関係が認められた。しかし、純光合成速度の系統間差は判然とせず、収量形質との相関関係は認められなかった(臼井ら,2022:生物と気象)。 気孔コンダクタンスと群落表面温度との間に有意な相関関係がみられ、F1が親系統より高い値を示す傾向が見られた。気孔コンダクタンスと蒸散速度の相関関係は、葉における蒸散量が群落表面温度の低下に寄与しており、それにともなって葉気温較差も低くなった。すなわち、F1の方が親系統より葉温上昇を抑えることができるだけでなく、気孔からのCO2の取り込みにも有利に働いたものと推察された(臼井ら,2022:生物と気象)。これまでも、本研究では葉気温較差と気孔コンダクタンスの相関関係において、両者の間には負の相関関係があること(臼井ら, 2021:てん菜研究会報)を報告しており、本結果も同様な結果を得ることができた。 群落表面温度の測定は、放射温度計や熱画像カメラによって連続的かつ遠隔的な計測が容易にできるパラメータであるため、気候変動下における品種開発の選抜指標として応用が期待されるだけでなく、ハイスループットな選抜技術の開発にも役立てることが期待される(臼井ら,2022:生物と気象)。
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