研究課題/領域番号 |
18K05916
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
小林 有一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業技術革新工学研究センター, ユニット長 (10355513)
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研究分担者 |
坪田 将吾 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業技術革新工学研究センター, 研究員 (90643388)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 農産物流通 / レーザー印字 / トレーサビリティ |
研究実績の概要 |
本研究では、青果物の表面にレーザーにより個体情報をダイレクトプリントする技術を開発するとともに、その情報を流通管理や消費者が効果的に活用出来る仕組みの構築を目指している。書き換え不能なプリントはトレーサビリティに役立ち、青果物表面へのダイレクトプリントでは近年問題となっている過剰包装等への代替技術となることが期待できる。本年度は、青果物表面への印字として、表面の状態に特徴がある青果物を対象に、表面の状態が印字への影響について調べるために、表面が滑らかで比較的乾燥しているニンニクやジャガイモ、表面が軟弱なトマト、表面にもうじと呼ばれる毛が生えているキウィフルーツなどで試験をした。一方装置の設定において、レーザー出力が設定値を良好に反映せず、安定していないことが観察より考えられた。そのため、レーザーパワーセンサー(COHERENT PM30)を導入し、印字の条件を再現した状態でレーザー強度を計測したところ、条件によっては設定の半分程度の出力しか得られていなかったことが判明した。印字の負荷について、ミニトマトで、印字後の重量経時変化を調べた。37.4Ws以下の試験区では対照区と大きな差がなく、5日後の外観にも目立った違いは確認できなかった。118.3Wsでは、重量が大きく減少していっており、5日後にはしぼみが確認された。状況からしてこの重量減少の主要因は、水分減少であり、表面のクチクラが破壊されたことによる蒸散量の増加と言える。トマトのクチクラ厚さは2~4μmであるとされるので、蒸散が抑制できる程度に表皮の最上層だけに印字できれば、ミニトマトでは、対照区と同等の品質保持の可能性があった。印字した記号の読み取りに関しては、読み取りにARコードのほか、AIカメラによる認識等を試み、また情報表示としてVR空間に表示する3Dファイルの作成に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青果物表面へのレーザーによる印字に関しては、試行錯誤の結果、およその条件を示すことが可能となった。ダイレクトプリントの条件については、レーザー強度について装置の安定性に課題が見つかったが、別途計測することで、試験区間での比較評価が可能となり、今後の試験方法が明らかとなった。印字の読み取り、情報の提供方法については、読み取りの光環境などにより正解率が安定しなかったが、画像処理の閾値設定などのプログラムを改良などの対応により、文字、図形等の表示が可能な条件を示した。
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今後の研究の推進方策 |
青果物への負荷については、レーザー強度と貯蔵性との関係について引き続き実施し、顕微鏡での表面観察の方法を検討したい。またAIカメラで読み取りが可能な記号の大きさや解像度について比較試験を実施する。表示を読み取り、情報を提供する仕組みにおいては、読み取り装置での装置の変更やプログラム上の閾値設定等の改良や、VR空間に提供する情報について、その内容や手法、例えば3D画像や音声について検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の整備内容を見直したこと、国際学会の分科会が国内で実施されたなどで当初見込んでいたより旅費が節約できたこと、などによる。 次年度使用額については、次年度に請求する研究費と合わせて、本研究課題の効率的な推進のために使用する。
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