研究課題/領域番号 |
18K05923
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
乙黒 美彩 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (20635099)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動性乳酸菌 / ワイン醪 / Lactobacillus / 走化性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では鞭毛を有する運動性の乳酸菌を効率よく分離する方法の構築を目的としている。これまでの研究で運動性乳酸菌L. nagelii JCM 12492Tの誘引剤としてフェネチルアルコールが有効であり、実際に毛細管捕集法を用いてワイン発酵もろみから多数のL. nageliiの分離に成功している。しかし、その他の種類の運動性乳酸菌が分離できなかったことから令和元年度は新たな誘引剤の探索と分離方法の改良を検討した。また運動性乳酸菌分離株および基準株のジャガイモ疫病菌Phytophthora infestansに対する抗菌活を調査した。 【メンブレンフィルターを用いた新たな選択分離法の開発】L. ghanensis JCM 15611T について、ThinCert培養細胞インサート(グライナー社製)を用いたアミノ酸に対する走化性を試験した。その結果システイン、リシンなど候補となる誘引剤をいくつか見出した。 【有用性評価試験方法の検討】運動性を含む乳酸菌の農業への展開を視野に有用性・応用性を評価するため、ジャガイモ疫病菌(Phytophthora infestans)に対する抗菌活性試験法を確立した。すなわち乳酸菌を生育させたMRS平板寒天培地上に試験菌であるP. infestansを懸濁したPDA軟寒天培地を重曹する方法である。本方法を用いて、シャルドネ種ブドウ果汁から分離した運動性乳酸菌を含む京漬物分離株、基準株の合計261株についてスクリーニングを行い、12株に抗菌活性を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は分離方法の改良を行うべく、細胞培養に用いられるインサートメンブレンを使用した方法の検討を行い、この方法が乳酸菌の分離に利用できることが示唆された。また、L. ghanensis JCM 15611Tに対する新たな誘引剤の探索を行った。いくつかの候補物質を発見したが、実際の分離法への展開には至らなかった。一方、農業分野への展開を視野に乳酸菌のジャガイモ疫病菌Phytophthora infestansに対する抗菌活性試験法を確立し、12株に活性を見出しており、当初の予定したとおりおおむね順調に研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに環境中から分離した運動性乳酸の一部を微生物保存機関へ寄託する。既知の運動性乳酸菌がワインや焼酎などのアルコール製品の発酵過程から分離された報告例があることから、香気成分に対する走化性を調査して、誘引剤もしくは忌避剤の候補物質を調査する。また候補となる誘引剤を用いて、自然環境や湖水、醸造環境中から運動性乳酸菌の分離をさらに実施する。一方、ジャガイモ疫病菌に抗菌活性を示した乳酸菌が生産する抗菌物質の同定を進めていく予定である。
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