これまで,土壌を利用した水質浄化法で最も重要なことは,浄化の核心部である土壌団粒へ,いかに有効に汚水を接触浸透させるかであると示してきた。そこで,耐水性の水質浄化用土壌団粒を作成し,土壌への汚水の接触を極限にまで高めようと考えた。その結果,有機物やリンについては従来の土壌式浄化法に比べ遥かに高い浄化能を示し,窒素浄化能を向上させる手法が見出せれば,本方法は優れた水質浄化法になり得ると期待された。そのため本研究では,硝化および脱窒に特化した土壌団粒を創製し,土壌の窒素浄化機能を極限にまで引き出すことを目的とした。窒素浄化能を強化する炭化物等の資材を土壌に混合して人工的に土壌団粒を作成し,この土壌団粒に硝化や脱窒菌群を集積させる運転管理手法の確立を目指す。 令和3年度では,前年度に開始した脱窒用団粒の水質浄化試験を継続して実施した。硝酸吸着能を高めた炭化物の混合割合を変化させた黒ぼく土団粒と陰イオン交換樹脂を混合した団粒で比較を行った。全期間を通して陰イオン交換樹脂混合団粒のNO3-N流出量が最も低く,また炭化物の混合割合の増加がNO3-N流出の低下に寄与し,吸着容量が高いほど脱窒処理に有効であると示唆された。脱窒のための電子供与体としてヨシの添加を検討したところ,ヨシ投入量および頻度によってCODの上昇を抑えつつ脱窒を進行させる制御を行うことが可能であった。 また,水質浄化試験後の硝化用団粒および脱窒用団粒を対象にアンプリコンシーケンス解析を実施した。同じ原水の投入でも混合する資材によって細菌叢が異なることが示唆され,混合する資材を調整することで微生物群集の制御を行える可能性が示唆された。
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