大気中に含まれる二酸化窒素(10~50 ppb)はバイオマス蓄積の促進、栄養生長および花芽形成促進を正に制御する植物成長調節因子である。このような二酸化窒素の調節機構の究明は、植物生物学の基礎や新規学術領域の創成、また二酸化窒素は自然にどこにでもあるものであるが故に環境無負荷、省エネルギーしかも高収量の画期的農業生産技術開拓の視点からも重要である。植物の二酸化窒素受容機構(センシング機構)の解明は、同調節分子作用機構の解明において必須不可欠の課題である。胚軸伸長を指標として二酸化窒素感受性欠失変異株をT-DNA挿入ラインから選抜、解析し、pif4変異株は二酸化窒素不感受性株であることを明らかにした。本研究はその分子的実態を究明し、PIF4タンパク質制御による二酸化窒素センシング機構の解明をめざす。 これまでに、二酸化窒素はPIF4遺伝子の転写および翻訳レベルで発現に影響しないことを明らかにした。PIF4標的遺伝子のプロモーター領域に対するPIF4タンパク質の結合が二酸化窒素により減少することをクロマチン免疫沈降(ChIP)法により示した。PIF4はBZR1、ARF6と相互作用して標的遺伝子の発現を制御する。そこで、Bimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)法によってこれらのタンパク質相互作用についてNO2の影響を調査するためにBiFC解析用ベクターを構築した。シロイヌナズナ葉にアグロインフィルトレーションによりBiFC解析用ベクターを導入して共焦点レーザー顕微鏡によりGFP蛍光が観察されることを確認した。これらのベクターを導入した植物体を作出した。NO2処理してタンパク質相互作用におよぼすNO2の影響を調査する必要がある。
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