研究課題/領域番号 |
18K05927
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
赤木 功 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (40500004)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 土壌中有機態臭素の可溶化 / 土壌還元 / 水稲栽培 / 臭素収支 |
研究実績の概要 |
本研究は次の3つの課題,土壌の還元化(嫌気化)に伴う有機態臭素可溶化効果の検証(課題1),土壌の還元化(嫌気化)に伴う臭化メチル発生の検証(課題2),水稲栽培における農耕地の臭素収支の解明(課題3)で構成されている.当該年度は,課題1について実施した. 土壌の還元化(嫌気化)処理の前後での土壌中水溶性臭素濃度の変化を調査することで,還元化による有機態臭素の可溶化の可能性について検証した.100 mL容ガラス培養瓶に2種類の土壌(黒ボク土および未熟土)をそれぞれ10 gづつ充填し,蒸留水を50 mLを添加して湛水状態とした.ポリフィルムで覆った後,30℃の恒温器内に静置した.所定期間経過後.往復振とう(1時間)し,土壌中の水溶性臭素を抽出した.抽出した臭素はICP質量分析装置で測定した.その結果,49日経過後,土壌中の水溶性臭素濃度は,黒ボク土では0.071 g/kgから0.148 g/kg,未熟土では0.084 g/kgから0.160 g/kgへと,それぞれ2.2倍,1.9倍増加することが示された.このことは,土壌の還元化によって土壌中の有機態臭素が水溶性の形態へと可溶化したことを予想させるものである.ただし,本試験では,充填した土壌の層が薄く,十分な土壌の還元層が形成されなかった可能性が考えられた.この点については,次年度,改良を行い,再度試験を実施する計画である. 一方,次年度以降に計画している 課題3の実施に向けた予備試験を行った.1/5000aワグネルポットに黒ボク土および未熟土を充填し,湛水状態で水稲を栽培した.90日後にポット内の土壌を採取し,その水溶性臭素濃度および全臭素濃度を測定した.その結果,黒ボク土および未熟土のいずれにおいても,栽培後の土壌では栽培前よりも水溶性臭素濃度が6.6倍(黒ボク土)および2.2倍(未熟土)程度増加することが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画している3つの課題のうち,1課題について当初計画通りに研究を遂行でき,研究の一つの目的である「土壌中有機態臭素の可溶化の可能性」を支持する結果が得られた.ただし,試験方法については改良の余地があると考えられた.これについては,次年度,再試験を実施したいと考える.また,次年度以降に計画している研究課題(水稲栽培条件下における収支解明に関するポット試験)も予備的に実施を行い,本試験に向けて改善が必要なことをピックアップすることができた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初計画通り,土壌の還元化(嫌気化)に伴う臭化メチル発生の検証(課題2),水稲栽培における農耕地の臭素収支の解明(課題3)を中心に研究を遂行する.特に次年度(2年目)は,課題2について集中的に研究を遂行するとともに,当該年度の結果から実験方法に改善の余地が見られた課題1について検証を行う.課題1については,ガラス製植物培養用試験管を用い,土壌の層を厚くすることで再試験を行う計画である.課題2を遂行するにあたってはヘッドスペース自動濃縮装置つきガスクロマトグラフィー質量分析装置を利用することになるが,当装置を保有・管理している研究施設とのコンタクトを十分に行う必要があると考える.課題3については,最終年度(3年目)に本試験の実施を予定しているが,2年目に本試験を模した予備試験を実施したい.また,当該年度に得られた研究成果について,関連学術集会(環境化学討論会を予定)で公表し,研究の方向性ついて議論を深めたい.
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