研究課題/領域番号 |
18K05929
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
元木 悟 明治大学, 農学部, 専任准教授 (80502781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ルチン / プロトディオシン / 生育阻害活性 / 無機成分 / バイオマス / 未利用部位 / 機能性成分 / 露地栽培 |
研究実績の概要 |
アスパラガスは人気の野菜であり,健康に有益な機能性成分を多く含むものの,アスパラガスの生産現場では,未利用部位の産出量が多く,その処理が課題となっている.アスパラガスの未利用部位における有用成分資源としての利用の可能性を探るため,アスパラガスのそれぞれの部位について,2018年度に実施したルチンおよびプロトディオシンの分析に引き続き,2019年度は無機成分,生育阻害活性およびバイオマス(有用成分資源量)を調べた.その結果,2018年度のルチンおよびプロトディオシンの結果と同様,アスパラガスにおける無機成分,生育阻害活性およびバイオマスには部位間差が認められた.無機成分分析の結果,貯蔵根のCaおよびMg含有率は褐色の古い根ほど高く,N,PおよびK含有率は白い新しい根ほど高い傾向であった.また,主茎のうち,髄のN,PおよびK含有率は表皮に比べて高い傾向であった.春芽,夏秋芽ともに,若茎の乾物率およびN,P,K,Ca,Mg含有率は先端部が基部に比べて高い傾向であった.完熟果のP含有率は幼果に比べて高く,N,CaおよびMg含有率は低い傾向であり,完熟するにつれて,Pは果実に集積した.さらに,主茎,1次側枝,2次側枝および擬葉を比べると,PおよびK含有率は主茎に近いほど高く,N,CaおよびMg含有率は主茎から遠いほどが高い傾向であった.生育阻害活性は,鱗芽や吸収根,表皮以外の貯蔵根などで強い傾向,擬葉や側枝,主茎などで弱い傾向であり,地下部で強く,地上部で弱いという既報の結果を支持した.また,地上部の若茎先端部や鱗芽でも生育阻害活性が強かったことから,萌芽に直接関わる組織には生育阻害物質が多く含まれている可能性がある.現在,それぞれの調査項目の相関関係について解析中である.さらに,2019年度より閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培で未利用部位の比較を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アスパラガスのそれぞれの部位における代表的な機能性成分であるルチンおよびプロトディオシンの分布の研究成果については,論文が2019年11月に海外誌に掲載された.2019年度の無機成分,生育阻害活性およびバイオマス(有用成分資源量)の研究成果については,現在,データ解析中であり,今後,学会誌に投稿予定である.2019年度から新たに始めた閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培における未利用部位の比較の試験についても順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
アスパラガスのそれぞれの部位について,2019年11月に海外誌に掲載された機能性成分のほか,生育阻害活性,無機成分およびバイオマスについても分析が終了し,それぞれの関係を明らかにするため,データ解析中である.また,閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培において,それぞれの成分,活性およびバイオマスを比較検討し,アスパラガスの未利用部位における新たな利用価値の創出につなげる.現在,日本で栽培されるアスパラガスの品種は多様化していることから,今後は本研究で得られた知見を基に,それぞれの成分,活性およびバイオマスの品種間差異を明らかにするとともに,機能性成分を高める栽培技術を検討し,アスパラガスの未利用部位の新たな利用方法を提案していきたい.
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