研究課題/領域番号 |
18K05929
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
元木 悟 明治大学, 農学部, 専任准教授 (80502781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ルチン / プロトディオシン / 生育阻害活性 / 無機成分 / バイオマス / 未利用部位 / 機能性成分 / 露地栽培 |
研究実績の概要 |
アスパラガスは人気の野菜であり,健康に有益な機能性成分を多く含むものの,アスパラガスの生産現場では,未利用部位の産出量が多く,その処理が課題となっている.アスパラガスの未利用部位における有用成分資源としての利用の可能性を探るため,アスパラガスのそれぞれの部位について,アスパラガスの代表的な機能性成分であるルチンおよびプロトディオシンのほか,無機成分,生育阻害活性およびバイオマス(有用成分資源量)を分析した. アスパラガスの地下部では,無機成分の含有率が高く,さらにK,CaおよびMg含有率は地上部に比べて高い傾向であった.しかし,地下部では生育阻害活性が強かったことから,活性炭を併用することにより,有機質資源として圃場で再利用できる可能性がある.一方,アスパラガスの地上部では,生育阻害活性が弱く,ルチン含量とNおよびK含有率が高く,生育阻害活性は低い傾向であった.無機成分のそれぞれの含有率から換算すると,茎葉刈りとり時の地上部の茎葉には,乾物1t当たりのNが17.2~34.5kg,Pが1.8~2.8kg,Kが22.5~32.5kg,Caが0.7~7.1kg,Mgが0.5~1.9kg含まれると考えられた.そのため,地上部に病害が発生していない場合には,地上部を有機物(緑肥)として利用できることが示唆された.生育阻害活性の評価において,幼根阻害率と胚軸阻害率との間には有意な正の相関が認められた.生育阻害活性と無機成分との関係は,幼根阻害率とPおよびK,胚軸阻害率とN,PおよびKとの間に有意な正の相関が認められた.生育阻害活性と機能性成分との関係は,幼根阻害率とルチン含量との間に有意な負の相関が認められた. 2019年度から閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培で未利用部位の比較を行っており,新型コロナウイルス感染症の影響により閉鎖型環境の栽培が遅れたものの,分析試料は準備できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アスパラガスの代表的な機能性成分であるルチンおよびプロトディオシンのそれぞれの部位における分布に関する論文「Distribution of Rutin and Protodioscin in Different Tissue Parts of Asparagus (Asparagus officinalis L.)」が2019年11月に学会誌(海外誌)に掲載された.さらに,本研究課題をまとめた論文「アスパラガス未利用部位の利用価値の創出」が2021年3月に学会誌(国内誌)に掲載された.無機成分,生育阻害活性およびバイオマス(有用成分資源量)を含めた研究成果については,現在,学会誌(海外誌)に論文投稿中である. 2019年度から新たに始めた閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培における未利用部位の比較の試験については,新型コロナウイルス感染症の影響により閉鎖型環境の栽培が遅れたものの,分析試料は準備できた.
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今後の研究の推進方策 |
「アスパラガス未利用部位の利用価値の創出」について,すでに学会誌(海外誌)に論文が掲載された機能性成分だけでなく,生育阻害活性,無機成分およびバイオマス(有用成分資源量)においても分析および解析が終了し,学会誌(海外誌)に論文投稿中である.今後は,閉鎖型環境(植物工場)と露地栽培の分析試料について,それぞれの機能性成分,生育阻害活性およびバイオマスを比較検討し,アスパラガスの未利用部位における新たな利用価値の創出につなげる. 現在,日本で栽培されるアスパラガスの品種は多様化していることから,今後は本研究で得られた知見を基に,それぞれの機能性成分,生育阻害活性およびバイオマスの品種間差異を明らかにするとともに,機能性成分を高める栽培技術を検討し,アスパラガスの未利用部位の新たな利用方法を提案していきたい.
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