研究課題/領域番号 |
18K05930
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
甲斐 穂高 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50518321)
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研究分担者 |
山口 雅裕 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00360660)
石橋 弘志 愛媛大学, 農学研究科, 准教授 (90403857)
石橋 康弘 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (00212928)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ネオニコチノイド / 環境変化体 / 毒性影響 / 脳神経系 / メダカ |
研究実績の概要 |
ネオニコチノイド(NNI)系農薬は、自然環境中において代謝され、その代謝物(環境変化体)は代謝前のNNI(親化合物)と同等以上の毒性があることが懸念されている。一部のNNI環境変化体は、親化合物と比較してα4β2nAChRに強い結合親和性を示すことが明らかにされており、これが脳神経に影響を与えている可能性がある。本課題では、メダカを対象として、NNI環境変化体が脳神経系へ与える影響、組織や器官に与える影響、遺伝子発現への影響を評価し、NNI環境変化体が個体―組織―細胞レベルにおいて包括的に解析することを目的としている。 当該年度は、昨年度に選択したNNIの親化合物、環境変化体、最終代謝物のメダカ胚曝露実験を行い、メダカ胚の脳神経系の観察、メダカ胚の器官や組織の免疫学的手法による観察、発現遺伝子の解析、LC-MS-MSによる対象化合物分析条件、仔魚に与える影響について検討し、次の成果が得られた。蛍光試薬を用いた抗体染色手法を用いてメダカ胚の脳神経系の観察手法を確立し、対象化合物毎のメダカ胚脳神経系の状態を取得できた。免疫学的手法を用いたメダカ胚の器官や組織の観察結果から、肥大化している可能性の高い器官があることが示唆された。対象化合物に曝露したメダカ胚で発現している遺伝子を解析し、曝露物質によって発現している遺伝子量に関するデータを取得できた。LC-MS-MSによる対象化合物の分析方法について検討した結果、対象化合物を回収するカラムの種類と抽出に用いる溶媒等を昨年度使用したものから新たなものに変更することで、昨年度に分析できなかった対象化合物が分析できるようになった。対象化合物が仔魚に与える影響について、影響が認められる濃度を急性毒性試験によって明らかにし、また、仔魚と胚(卵)における影響が認められる濃度の関係性(仔魚と胚の感受性の差)について知見を得ることができた
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光試薬を用いた抗体染色手法によってメダカ胚の脳神経系の観察手法を確立することができ、これにより対象化合物を複数の濃度に調製し、これらを曝露したメダカ胚の脳神経系の状態を確認することができている。加えて、対象化化合物を曝露する際の胚の発生ステージも複数のステージで曝露実験を展開することもできており、発生ステージにおける対象化合物の影響も評価できる状況である。また、免疫学的手法を用いて対象化合物に曝露したメダカ胚の器官や組織を観察したところ、器官が肥大化している状態を確認することができており、対象化合物がメダカ胚に与える新しい知見を得られている。qPCRの測定系を利用して対象化合物に曝露したメダカ胚の遺伝子発現を解析し、対象化合物が遺伝子発現に与える影響について知見が得られた。そして、当初実施予定ではなかったが、仔魚を用いた96時間急性毒性試験をいくらか実施しており、対象化合部の仔魚に与える影響についての知見を得ることができた。 LC-MS-MSによる対象化合物の分析については、昨年度の成果をふまえて、分析のための前処理を変更して、対象化合物の分析が可能になった。確立した分析方法によって、市販されている製品中に含まれる対象化合物の分析を試みたところ、それが検出される成果をあげることができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず、胚への対象化合物曝露実験において、神経系に対して影響が認められる濃度と発生ステージの関係を明らかにする。そして、この中において影響があると認められた条件において遺伝子発現解析を実施し、神経系への影響と遺伝子発現の関係性を明らかにする。次に、対象化合物に曝露した胚で組織や器官の異常が認められたものについて、新たな免疫学的染色手法を適応した観察を通して、異常が引き起こされている原因を明らかにしていく。また、対象化合物のLC-MS-MS分析では、分析方法の最適化や簡便化を目指し、かつ、曝露実験系の溶液濃度測定、市販品や環境水中に含まれる対象化合物の測定を試み、分析方法のノウハウを積み上げていきたい。これらの結果を総合して、本研究の目的であるネオニコチノイ系農薬、特にこの環境変化体による脳神経系への作用濃度・毒性影響とその発現機序を包括的に明らかにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度は、過去の2年間で得られた知見(主に最適な曝露条件)をふまえての毒性試験を実施し、その試験から得られたメダカ胚の遺伝子発現解析を実施する予定である。遺伝子発現解析に必要な費用は、おおよそ1検体あたり10万円程であり、複数回の遺伝子発現解析を行うための研究費が多く必要である。確実に結果が得られる様に研究を進めてきており、最終年度に配分されるこの予算計画は、妥当であると考えている、
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