研究課題/領域番号 |
18K05931
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研究機関 | 福島県農業総合センター |
研究代表者 |
三田村 敏正 福島県農業総合センター, 浜地域研究所, 専門員 (00504052)
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研究分担者 |
松木 伸浩 福島県農業総合センター, 生産環境部, 主任研究員 (30504055)
吉岡 明良 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 研究員 (80633479)
田渕 研 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, 上級研究員 (90531244)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 東北地方太平洋沖地震 / 東京電力福島第一原子力発電所事故 / 営農中断 / 営農再開 / 水生生物 |
研究実績の概要 |
東北地方太平洋沖地震とそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、営農中断し、その後再開した水田において、生物相の変化を明らかにするため、営農中断し表土剥ぎおよび客土を実施、営農中断し、表土剥ぎなし、営農中断なし、のほ場を平野部と山間部、さらには栽培方法として、直播と移植に分け、16地区42枚の調査ほ場を設定した。調査は「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル」により、ダルマガエル類、アカネ類・イトトンボ類、水生昆虫類、アシナガグモ類について行った。ダルマガエル類は小高区金谷で、営農再開後3年目でニホンアカガエルが初確認された。また、トウキョウダルマガエルは、営農を中断した地域で少ない傾向であった。アカネ類羽化殻は富岡町以外のすべての調査地で確認された。アカネ類の羽化時期は地域によって差がみられた。イトトンボ類は6種が確認され、アジアイトトンボが最も多かった。水生昆虫は営農中断ありでは21種、営農中断なしは13種が確認され、営農中断ありが多い傾向であった。。キイロヒラタガムシ、コミズムシ属、ヒメアメンボは前年同様、多くのほ場で、また、ヒメゲンゴロウ、ホソセスジゲンゴロウ、マメガムシ、トゲバゴマフガムシ、ミズカマキリ、メミズムシは営農中断ありのほ場でのみ確認された。アシナガグモ類ではほとんどがアシナガグモ属5種であった。トガリアシナガグモとヤサガタアシナガグモは営農を中断した地域で少なく、ハラビロアシナガグモは山間部で多い傾向であった。 また、2019年度は装置の基盤に結露の影響を受けにくいような処理を施し防水性を高めるとともに、秋季には昨年度より1地区増やした6地区の水田に合計18台の自動撮影装置を設置して、自動撮影枚数と見取り調査によるアカネ類密度との相関を検討した。その結果、昨年度同様にアカネ類の自動撮影枚数と見取り調査によるアカネ類密度には正の相関が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原発事故後の水田生物の変化については、当初予定した16地区42ほ場のすべてを調査することができた。アカネ類の簡便な評価方法に関しては、秋期に6地区18台を設置して調査を実施し、昨年度と同様に自動撮影と見取り調査に相関があることを確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
原発事故後の水田生物の変化については、引き続き2019年度と同一ほ場において、「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル」により、ダルマガエル類、アカネ類・イトトンボ類、水生昆虫類、アシナガグモ類について調査を行う。また、必要に応じて周囲の環境等の調査も行う。 また、3年間の水生生物調査結果から、生産環境の変化が生物多様性の指標種の発生に及ぼす影響を解析し、生物多様性回復のために必要な要因を明らかにする。 アカネ類の簡便な評価方法に関しては、引き続き自動装置の改善とそれを用いた調査を行い、データの蓄積と分析を進める。また、防水、防露性が改善されたにも関わらず撮影の挙動が不調だった装置について信号のログを取得し、改善点について検討する一方で、よりとりまわしをしやすいように装置を改良する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた3月の学会がすべて中止となってしまったため、その分の旅費を支出することができず、次年度に繰り越すこととなりました。この分については、次年度国際学会に参加予定ですが、さらに国内学会にも参加して、成果を発表する予定です。
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