研究課題/領域番号 |
18K05932
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
大田 ゆかり 群馬大学, 食健康科学教育研究センター, 講師 (40399572)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リグニン / リグニンモデルダイマー / グルタチオン転移酵素 / Novosphingobium / トランスクリプトーム / 酸化還元酵素 |
研究実績の概要 |
これまでに被検株Novosphingobium sp. MBES04株のトランスクリプトーム解析で見出された、リグニンモデルダイマーと抽出リグニンを添加した際に発現誘導される4つの機能未知遺伝子がコードするタンパク質の機能を解析してきた。今年度は未解析であった残り1つの遺伝子について組換え酵素を作成し、酵素機能同定を進めた。酵素反応液のHPLC-UVを用いた解析で、フルフラール還元活性を示すことが推定された。フルフラールはバイオマス糖に由来する芳香族アルデヒドで多くの生物にとって有害である。フルフラールを還元してフルフリルアルコールとすることで毒性の低減につながることから細胞の生存にとって有利な反応と言える。 また、着目する4遺伝子の機能を細胞レベルで確認するため、遺伝子破壊株の取得を行った。目的とする破壊株を選択するために使用する抗生物質に対して、野生株が示す薬剤耐性が予想外に高く、破壊株が選択できる薬剤使用条件を見出すために想定外の時間を要した。現在は対象とする4遺伝子のうち、残る1遺伝子の破壊株取得においてゲノム配列の確認を実施している。 遺伝子機能を細胞レベルで確認するためには、炭素源を絞った合成培地での培養が好ましいが、本菌株は低栄養培地で凝集を起こしやすく安定した培養が困難であった。培養条件を見直すため、本菌株の金属要求性を調査した結果、Mg、Caの2価塩を2種添加することで、低栄養条件下でも安定した培養が可能となった。 続いて、上記4遺伝子がリグニン代謝にどのように関与するか検証するため、リグニン変性物の一つとしてソーダリグニンを使った培養を開始した。ソーダリグニンに含まれる多種の芳香族低分子は微生物の増殖を阻害することから、取得した破壊株と野生株の増殖や代謝を比較することで、着目する遺伝子が芳香族低分子に対する抵抗性に関与するかどうかを検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度前半に行った破壊株の取得に際し、想定外の時間を要し、後続の培養実験開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
酵素反応液のHPLC-UVを用いた解析で、フルフラール還元活性を示すと推定された酵素について、反応をGCMSでも分析し、機能を確定する。取得した破壊株と野生株を比較するため、リグニン様物質を添加した培養実験を進める。これらの結果およびゲノム、トランスクリプトーム解析の結果に基づき、本菌株のリグニン応答性を論文にまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度前半に行った破壊株の取得に想定外の時間を要し、後続の培養実験開始が遅れた。年度終期に向けて、コロナの影響で欠品が多く消耗品調達にも遅れが出た。
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